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彼のやさしさ 後編 ページ17

その時、
ぽんっと布団越しから
心地いいくらいの重みを感じた。

「かまいませんよ、私は。

同じ見える者として、
少しは貴方の気持ちもわかるつもりですので…」

「…。」

「中途半端に見える世界とは違う。

はっきり見えるからこそ、辛くも感じ、
そして時偶に自分が一体
どちら側なのかわからなくなる。」

「お前は絶対それはないだろ…
だって、妖にだけ辛辣だし…」

自分の式を乱雑に扱うし…

私の言葉に彼は少し笑って答える。
「それもそうだ。

きっと、貴方は優しすぎるんですよ。

だからこそ…
余計に辛く感じるのでしょう。」

冷静な分析はいつもの彼なのだが、
こうして慰められるとは思ってもみなかった。

「なんか、お前らしくない…な…」

布団から顔を出して彼の方を見る。

「貴方はその妖の姿でいる方が、
ずっと素直になるようだ。

Aさん、目が赤いですよ?」

「え?妖の方の目になってる?」

「いえ、そうではありませんよ。」
そう言うと彼はハンカチを取り出して、
そっと私の目元にあてがう。

泣いていたのか…

「あまり目を擦ってはいけません。
貴方は普通とは違って
特別な目を持つ人、なんですから。

誇れるところです。」

「嫌だ、こんな目…」

「私は好きですよ。
その貴方の特別な瞳。」

そう言ってニコリと笑う的場。

「そんな事言っても、
一門には入らないからな。」

「おや、そんなつもりありませんよ。
私の唯々、純粋な思いを伝えたまでです。」

純粋って…
あんた、私を牢屋にどうとか
前に言ってたじゃないか。

「一番、純粋って言葉が
似合わないんだよ、お前…
腹の底になんかやばい物抱えてそうで…」

私の言葉に的場はムッとする。
その、いつもはしない彼の表情が面白くて
私はぷっと吹き出す。

「心外ですね?
酷い事を言う人だ。」

お腹を抱えてひとしきり笑い終える。

あぁ、でも笑ったからだろうか、
少し心が軽くなった。

「ありがとうな。的場。」

「お礼の言葉なんて要りません。」

当たり前のことをしたまでなので、
と紳士のように答える的場。

そこで終わるかと思っていたが。

「あぁ、その代わり、
今度お茶にでも付き合ってください。」

「なんだよ。結局なんか
見返りもらうんじゃねぇか。」

「いやですか?
良い茶屋を見つけたんです。」

「行くよ…行く。」

「そう言ってくださると思ってました。」

クスクスと笑う的場。

彼のその笑顔に、
心のどこかが温かく感じた。

茶屋の約束 前編→←彼のやさしさ 前編



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おぼろん(プロフ) - 豆腐の角さん» コメントありがとうございます!全然気にしないでくださいね。皆さんに見てもらえるだけでも嬉しいので!これからも頑張ります! (2020年11月7日 6時) (レス) id: a49c31890f (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の角(プロフ) - 二章目おめでとうございます!初めの一票取れませんでした………。これからも頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年11月6日 22時) (レス) id: d448052499 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おぼろん | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2020年11月5日 22時

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