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彼のやさしさ 前編 ページ16

本当、どうして私がこんな気持ちに
ならないといけないんだ。

「あぁ…」

私は自己完結させる。

「そうだ。全部私が見えるせいだ。」

私と同じ目を持つ的場は
その意味を理解する。

「妖が見える事…ですね。」

「そう、そうだよ。

こんな思いするくらいなら妖なんて…
あんなの、見たくなかった。」

私は自分の目を両手で追って隠す。
いっそ両眼でも潰してしまえば見えなくなる…なんて思いながら…

「最初から何も知らないまま生きて来たかった。」

自分は普通とは違うから、
繋がりを持つ事でさえ、
酷く苦労してしまうんだ。

「でも私には両眼を潰す度胸もないし…」
覆っていた手を離し、少し目を伏せると、
眠るれいじ君が…
私の唯一の繋がりが、目に映る。

「…。」

家族の「繋がり」を渇望しているのに、
同時にそれを持ちたくない自分が居た。

「どうせまた失うくらいなら
最初からなくていい…」

自分が吐き出した言葉に
私はハッと息を呑む。

今、私、なんて…

まるでれいじ君の存在を否定する言葉。

「っ、悪い…忘れてくれ。的場。」

すぐさま布団に戻って
隠れるかのように頭の上から被る。

自己嫌悪の中、
フッと頭の中でよぎった
沢山の鮮明な記憶。

妖が見えるから、
人とはうまく馴れ合えなくて
いつも独りぼっちだった下校の道。

気持ちが悪い、恐ろしいと
私を見る度に顔を歪める周りの大人達。

そして棺桶の中、
あの瞳を閉じて眠る母の顔のすぐ側に
置いた一輪の花。

密かに震える手が私の心情を
これでもかと表していた。

近くにあるその温もりが
今は更に私の中の罪悪感を煽っていく。

「ごめん…れいじ君…」

嘘でも吐いてはいけない言葉を、
自分は言ってしまった。

その事実に心が打ちのめされる。

彼のやさしさ 後編→←寝てる間の話 後編2



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おぼろん(プロフ) - 豆腐の角さん» コメントありがとうございます!全然気にしないでくださいね。皆さんに見てもらえるだけでも嬉しいので!これからも頑張ります! (2020年11月7日 6時) (レス) id: a49c31890f (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の角(プロフ) - 二章目おめでとうございます!初めの一票取れませんでした………。これからも頑張ってください!楽しみにしてます! (2020年11月6日 22時) (レス) id: d448052499 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おぼろん | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2020年11月5日 22時

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