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藤の館にて 前編 ページ32

「カァァアア!
藤ノ館デ、療養セヨォオオ!!!
療養セヨォオオオオ!!!」

「うっせぇ!!少しは黙れや!!
さっきから同じ事ばっか言いやがって!!」

目を吊り上げて僕の鎹烏に怒る獪岳。

「か、獪岳!」

今にも掴みかかりそうな彼を、
僕は慌てて止める。

しかし、止めるとは言っても、
この状態でそれも難しい。

鈴ちゃんは獪岳の背中で眠っており、
僕は自分の刀を杖代わりに歩いている。

だから、
僕は唯々彼の勾玉がついた紐を
まるで馬の手綱のように
横から引っ張るだけだ。

「鈴ちゃんも寝てるんだから…
静かに!」

だが、獪岳のこの反応も
仕方がないだろうともそう思う。

何故ならずっと小一時間、
僕の鎹烏が叫び続けているのだから…

「カァアアアア!!!」

「こいつっ!!」

どうしてか人一倍、
いやカラス一倍声が大きい僕の鎹烏。

「ほら、お前も、静かに…ね?」
光沢のあるその羽を優しく撫でてあげると、
逆立てていた毛を落ち着かせる。

「カァ。」

更に一度小さく鳴くと、
僕の肩から空へ飛びたった。

「そういえば…獪岳の鎹烏は…」

「あ?今はいねぇよ。」

「も、もしかして…」

彼の烏に対する扱いといい、
僕はハッとして彼の方へ向く。

「お腹空きすぎて…食べた…?」

「あ゛ぁ?!食べる訳ねぇだろうが!!
阿保か!!」

冗談すらも通じないような形相で、
彼は拳を握る。

「うわっ、ごめん、ごめんって…」

本当に殴られそうだったので、
僕はすぐさま彼に謝る。

チッと舌打ちをすると、
彼はプイッとそっぽを向く。

「あいつは、
以前の鬼と対峙した時に怪我しやがって。
今は療養中だ。」

「そう、なんだ…」

どんな表情をしているかは見えなかったが、
少し寂しそうな雰囲気が出ている獪岳。

「煩いだけだ…あんな奴。
いなくて清清する。」

そう彼は突き放したような言葉を
口には、する。

「本当に、そう思ってる?獪岳?」

ヒョイっと彼の顔を覗き込む僕。

「ふふふ。」
思わず笑いがもれ出てしまった。

実は、彼のその顔にはどこか
責任を感じているかのような重い表情を浮かべていたのだ。

「笑うな!」

「ふふふ、ごめんって!」

「そのニヤケ面やめろって言ってんだ!!」

「いや、ふふ。」

藤の館にて 中編→←地蔵となった人達へ 後編



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豆腐の角(プロフ) - おぼろんさん» いえいえ!こちらこそこれからも宜しくお願いします(*´▽`*) (2020年12月26日 12時) (レス) id: 3eaaa3cc5d (このIDを非表示/違反報告)
おぼろん(プロフ) - 豆腐の角さん» メリークリスマス!豆腐の角さん!いつもありがとうございます!ネットの中だけどほぼ本当の友達のような感覚で私自身とても嬉しいです。これからも宜しくお願いします! (2020年12月25日 15時) (レス) id: 77abd71179 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の角(プロフ) - おぼろんさん!メリークリスマスです!これからも楽しみです!頑張ってください (2020年12月25日 14時) (レス) id: 3eaaa3cc5d (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の角(プロフ) - あ、誤字っちゃいました(--;) (2020年12月25日 14時) (レス) id: 3eaaa3cc5d (このIDを非表示/違反報告)
おぼろん(プロフ) - 豆腐の角さん» 本当ですか?!そんな事言って頂けるだなんて、とても嬉しいです!俄然やる気が湧いてきます!(((o(*゚▽゚*)o))) (2020年10月18日 7時) (レス) id: a49c31890f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おぼろん | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2020年10月17日 19時

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