一輪草の記憶 第二章【鬼滅の刃】

地蔵のみちしるべ　後編 ページ22

山を登っていくと、
確かに感じたその気配。

獪岳は彼女を何も言わず、
そっと地面に下ろす。

「…？」
彼の行動に首を傾げる彼女。

「蓮。」
獪岳が僕の方を見て、彼女を指差す。

「どうしたの？」

自分が口を開けると怒ったかのような言い方になってしまう、と彼は僕に喋る事を放棄している。

彼女を泣かせたくないと言う
彼なりの優しさだろう。

「はぁ…獪岳、君だって普通に…」

「お前が言えってんだ！」

「わかった、わかった…

えぇと、鈴ちゃん…だよね。
道案内ありがとう。

此処からは僕らで行くから、君は山から降りたほうがいい。危険だからね？」

そう僕が言うと、
彼女は大きく首を横に振る。

「嫌っ！」

「…。鈴ちゃん？でも鬼が出るからね。
危険なんだ。」

「嫌なの、帰りたくないッ！」

獪岳が頭の血管をピクピク言わせている。
「この餓鬼ッ…」

「獪岳、あんまり…」

「そんなん、わかっとるわ！！ッ、」

次の瞬間、
急激に近ずいて来たその気配に、
僕達は刀を抜刀する。

自分に裸足で蹴りを入れて来たその鬼を、
僕は風柱様の刀で受け止める。

ガキンと音がして、
刀と同等の硬さを持っているであろう
その肌。

カチカチと音を鳴らす。

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