百三一 ページ31
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「起きられましたか、帰蝶様」
「光秀?」
目を覚ますと、ゆっくりと歩く馬の上だった。そして、いくつもの雄叫び。発砲音。戦の
織田本陣の織田木瓜の旗また永楽通宝の旗そして、徳川の三つ葉葵。対する武田の武田菱、真田家の六文銭。
「これが、長篠の戦い…」
血なまぐさい匂いが鼻を掠める。目を背けたくなるものだが、そうしてはいけなかった。武田軍から撤退とは逆に一騎の馬が織田本陣に向かって駆け抜けて行った。
「武田信玄だ」
それは本当に虎のように勇ましく、敵を薙ぎ倒していく。これが甲斐の虎なのだ。本当に辿り着いてしまうのではないかと、思ったその時に織田が動き出した。
「…まさか一騎討ちを受けるおつもりなのか。信長様は」
そう、また織田軍からも一騎戦場を武田信玄に向かって一直線に駆け抜けていく。一騎討ち、つまり二人だけで実力が勝る方が勝つというものだ。
「一騎討ち…とは違いますかね。
久しぶりですね、先生」
茂みから馬が出てきたかと思えば、荒川だった。セーラーは着ずに袖の長い高そうな着物を身にまとっていた。少し、大人びて似合ってない。
「荒川、」
「姫様、少し警戒というものをしてはいかがですか馬鹿ですか」
荒川を守るように、その前に一人の武将が前に立つ。全く見覚えのない人物だということは徳川の家臣だろう。姫とはいえ中々毒舌過ぎではないだろうか。今馬鹿と言わなかったか。
「明智さんはさて置き、先生は殺生は好きでは無いので大丈夫だと思いますよ」
「そうですか」
案外あっさりと、荒川の付き添い男は下がった。明智は馬を止め、俺を降ろして少しかばうように横に立った。荒川はにこにことしながら、俺に近づく。
「先生、信長さんに謀反を起こすか、徳川で過ごすか選んで下さい。謀反を選べば、明智さんも協力して貰います」
思わず眉を顰めた。初めの選択肢、荒川は本気で言っているのか?二つ目の選択肢しか選ぶ必要はないだろう。
「お前、何を言ってるんだ。謀反なんて必要ない。徳川で過ごせられるなら徳川に行く」
「本当にいいんですか?もし、信長さんが貴方をまた娶りたいと言っても私は許しませんよ。一生会えなくなりますが」
「姫、貴方は何を勝手なことを言っているのです」
荒川に不満を抱き、明智が口を挟んだ。荒川は聞き入れず、隠し持っていたのか火のついていない火縄銃を明智に突き付ける。
「嗚呼…それとも、全ての元凶の明智さんを殺しますか?」
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愛之助(プロフ) - そうです《自主規制》のひとりごとです^^ (5月21日 19時) (レス) @page39 id: 71bd857e36 (このIDを非表示/違反報告)
カケオレ - ま、まさか……薬〇のひとりごと……!? (5月21日 19時) (レス) @page39 id: 1b32a494c8 (このIDを非表示/違反報告)
愛之助(プロフ) - 玲さん» 作品の目次ページにボタンとCSSて書いてあるとこでオフにして貰えたらノーマルになるのでお願いします〜🙏💦 (2022年7月10日 21時) (レス) id: 71bd857e36 (このIDを非表示/違反報告)
玲 - すいません。とっても面白いんですけど背景のせいで文字が見にくいです。 (2022年7月10日 20時) (レス) @page39 id: be882aa841 (このIDを非表示/違反報告)
なーーみ(プロフ) - 愛之助さん» もう本当に感謝しかないです( ; ; ) ありがとうございます。 これからも頑張ってください。応援してます!! (2021年5月17日 22時) (レス) id: af11d71d69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:大手裏剣 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oh19years/
作成日時:2019年9月29日 1時