５７.どうしてそんなに ページ15
「……咲羅さん」
静馬さんの声が、驚きに揺れる。
「あ……」
とっさに出てしまったはいいけど、すぐに動揺して黙ってしまった。
しかし、静馬さんは何を問うでもなく、私が発した言葉に答えた。
「……どうもこうも、そのままの意味です。ギャラスタ総出で頑張ったんですから」
再び、静馬さんが笑ったのがわかった。
「私、逃げたまま……みなさんに会うのも、話をするのも避けてたのに、どうして」
「当然のことですよ」
小さな声で言うと、何を言っているの、とでも言いたげに返された。
「友人同士なのですから、助けたいと思うのも、心配をするのも、当たり前のことです」
「当たり前……」
「ええ」
諭すような柔らかい声に、泣きそうになる。
「私も心配していたんですからね。怜治様に落ち着きがないと指摘されるほどに」
しかし、呆れるように言われた次の言葉に少しだけ笑いが込み上げた。
「……そんなにですか？」
「ええ」
少し大袈裟ではないだろうか。もちろん、本当にそんなに心配してくれていたら嬉しいのだけど。
「大袈裟ですよ」
「嘘ではありません」
きっぱりと跳ねつけられた。少しだけ、ムキになっているように聞こえたのは気のせいだろうか。
「あなたが大切なんです」
どきりとした。
それではまるで、私が特別扱いをされているような言いぐさではないか。
「それは……」
間違っても勘違いをしてはいけない。ちゃんとどういう意味なのか確かめなければ。
「どういう」
こほん、と咳払いがひとつ、私の台詞を遮った。
「あの」
「あまり遅くまで電話をしていると、明日起きられなくなってしまいますね」
焦りにも似たような何かが、そのセリフから感じ取れたのは気のせいだろうか。
もやもやとしたものが胸のうちを覆う。答えを聞いてはっきりさせたかったのに、余計な期待を心に残してしまった。
「そう、ですね」
ただ、ここから再び掘り下げるのも変な話だ。大切なのは友達だからだと何度も自分に念押しして、素直に同意を示した。
「それでは、おやすみなさい」
「……おやすみなさい」
プツリと、通話が切れる。
「……ふふ」
複雑なものは残ったけど、それ以上に喜びが溢れて私の口角は自然と上がっていた。そっと端末を抱き締める。
静馬さんと久しぶりに話せたこと、花壇のこと。
明日は、楽しく過ごせそうだ。
じんわりと、胸が暖かくなった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 74人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼(プロフ) - …高校離れたから、もうだいぶ会うことも少なくなったけどね。 (2016年7月12日 21時) (
レス) id: 845aea6d7a (このIDを非表示/違反報告)
姫奈 - 蒼さん» 確かに、こんな人本当にいたらかなり疲れそう・・・ファイト！ (2016年7月11日 7時) (レス) id: 366548b939 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - マジで大変なんだからね、付き合うの。 (2016年7月11日 6時) (レス) id: 845aea6d7a (このIDを非表示/違反報告)
姫奈 - 蒼さん» ｗｗｗそう言うと思った！言ってみただけだよ〜ｗ (2016年7月7日 16時) (レス) id: 366548b939 (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 会わないほうがいいと…(-_-;) (2016年7月6日 22時) (レス) id: 845aea6d7a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：姫奈 | 作成日時：2016年4月20日 9時
