▽ ページ49
*
「だけどさあ、ミュージシャンって
好きだの、愛してるだのよく言えるよね。
いくら歌にのせててもさ」
『もし目の前で歌われたら
ぐっときちゃうかもな。
私だったら』
「えー？彼氏とかいても？」
『あははは。そうですね』
......。
え？これって、そうゆうことなの？秀平！
いい具合に注文した物が来て会話は途切れた。
流行ってるお店だけあって
パンケーキは絶品で。
僕も、Aちゃんも大満足。
隣の松井さんは、さっきの会話から
心ここに非ずで。
多分一生懸命、曲の事考えてるんだろうなあ。
分かり易いけど、Aちゃんを
ほったらかしでいいの？。
そういうとこ、分かんないかね。
Aちゃんは、松井さんの様子に
気づいてるみたいだけど
あえてそっとしてるみたい。
チラチラ視線送ってるのに、松井さん
全然気づかないなんて、あり得ないから！
しっかし、Aちゃんって
よく気が付くし、いい子だなあ。
松井さんが好意を寄せてるのは分かるけど
どうだろう。
ま、僕はやれるだけの事はやってあげたから
後は上手くやってよって感じだけどね。
『松井さん、全然喋んなく
なっちゃいましたね』
「パンケーキ美味しすぎて
感動してんじゃない？」
『あははは。確かに美味しかったですよね』
「そうそう、Aちゃん
この前の誕生ケーキ
吉瀬さんが作ったって知ってる？」
『え、そうなんですか？
とっても美味しかったですよね』
「ねー、あの人あんな特技あったんだね」
『本当だったら、私凄く嬉しいです。
わざわざ作ってくれたなんて』
今日のミッションはコンプリートかな。
吉瀬さんのフォローまでしちゃえるなんて
いい仕事したよ。
これでお店のチームワークよくなったら
僕も居心地いいもんね。
それから僕たちは嬉しい気分のまま解散した。
......1人を除いて。
ー···後日談···ー
「松井さん、Aちゃんに披露する曲
出来ました？」
「え、まだ」
「はあ？そういうのは情熱のまま勢いで
作るんじゃないんですか？」
「ばっか。そういうのは緻密に慎重に
考えてだなあ...」
「あ、もういいです、いいです」
「なんだよ秀平！」
......ダメだこりゃ。
これだったら、ビシッと告白させた方が
早かったかな。
だけど、そんな度胸あると思えないし。
作戦練り直すのも面倒だから、ま、いっか。
はぁ、と溜め息をついて仕事場に戻った。
Fin.
*
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作者名：瑠海 | 作成日時：2021年2月20日 13時
