言の葉NOTE (ページ37)

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『友達？』

「あ、Aだったら気が変わって
　付き合ってっ言うんだったら
　付き合ってもいいけど？」

また、そんな事を真面目な顔で言っちゃって。

『......結構です。』

「あはははは。言うと思った！」

　
それから先輩は、来年図書委員に
なったらいいのにと楽しそうに話をして。
次の年その通りにしちゃう私も私なんだけど。

なんだろう、魔が差したのかな。

先輩の楽しそうに笑う声をもっと聞いてみたいと思ったんだ。

失恋の傷は新しい恋で癒すなんて言うけれど
あの時の私は、ホントに恋愛は
もういいって思ってたし
恋愛観拗れちゃってる先輩を
冷やかしてみるのも
楽しいかなって、それだけだった。

「じゃあ、一緒に帰ろ」

『まあ、いいですけど』

だけど、これから気づいていく先輩の
魅力のひとつひとつが
私にとって大切な思い出になるなんて
この時は気づいていなかった。

「なぁ、手が冷たい人は心が温かいって
　知ってる？」

階段を下りながら聞いてくる。
その話題嫌なんだよなあ。

そのまま手を差し出してくるから
確認してって事なのかなと思って
そろりと握ってみる。

……冷た。

先輩は手を差し出しただけ
上から手を握る私は
お姫様にでもなったみたいで
ガラじゃないなって笑けてくる。

変な事考えながらボーッとしたせいで
こけそうになった。

先輩からぐっと引っ張ってもらったお陰で落ちなくてすんだ。

「あっぶね」

『す、すみませんっ』

「Aってさぁ、結構おっちょこちょい？」

ケタケタ笑いながら、手はそのままで。

『まあ、心が冷たい
　おっちょこちょいですかね』

手を離そうとしたら、ぐっと掴まれた。

「冷たいオレの手
　びっくりして離さなかったのって
　Aが初めて」

『先輩はそんな感じなのに
　心があったかいんですねぇ』

思い切り皮肉って言ってやったのに
相手はにこにこするばかりで

「見た目通りっしょ」

自信満々に答えられた。

また、こけられたら危ないからと言って
1階へ降りるまで手は繋いだままだった。

Fin.

*