言の葉NOTE (ページ32)

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『人気全部持ってかれたのによく平気ですね』

「何言ってんの。曲がさ、最高なのよ。
　あんなの自分で作れるなんて
　尊敬しかないから」

ふーん。
私はその曲聞いた事ないから分からない。
だけど、そうやって人の事尊敬出来る松井さんっていい人なんだな。
私だったら、そんな才能
嫉妬の対象でしかないかも。

「そのサークルには入会するの？」

『うーん。まだ決めてなくて』

今日の歓迎会に参加したのは
友達に誘われたからで。
入るかどうかはまだ考え中。
くだんの知り合いには、何かに入会してた方が
大学生活充実するんじゃない？
って言われたけど、ここでバイトしてる方が
お金になるし楽しいよなあと思っている。

なんたってここは居心地がいいのだ。

あ、でも帰る時に送ってくれた先輩には
また会いたいかな。

あの時なんであの人の隣に座ったのか
分からない。
周りのキラキラさとは違う何かがあった....
から？

別れ際ここのお店のカードを渡した。
いつか来てくれるといいな。

「相澤さん。時間だから
　もうあがっていいよ。ありがとね」

『いえ、吉瀬さんの代わりは
　務まりませんでしたけど』

「いいの、いいの。
　若い子が居てくれるだけで華やぐから」

『........』

「....オーナー、それは吉瀬さんに失礼だし
　相澤さんにもセクハラ発言
　じゃないでしょうか」

わわっ。秀平さん、いつの間に。

「あ、いや、その、僕は
　そ、そんなつもりで言ったんじゃ....」

秀平さんがあんな事言うから
香住さん動揺しちゃってる。
すると松井さんがスッと間に入って
オーナーに手のひらを向けた。

「オーナー。----時を、戻します？」

松井さんの言葉に、こくこくこくと
激しく首を縦にふるオーナー。
そのやり取りの後、大笑いしてるふたりと
肩を震わせながら
洗い場に戻っていく秀平さん。

......なに、これ。

何が面白いのか全く分からない私を
おいてけぼりにして。
ふたりは持ち場に戻っていく。

私は帰り支度を始めた。

『じゃあ、お疲れ様でした』

「お疲れ様。夜道気を付けてね」

はい、と言って裏口から出ようとすると
正面のドアが開いた。

「こんばんはーお久しぶりです」

「おお、臨太朗くん。久しぶり」

「Aちゃんのお迎えにあがりました」

「そっか、またゆっくり食べにきてよ」

「はーい」

『ちょっと、りんさん！
　外で待っててって言ったのに』

「えー、だって遅いから来ちゃった」

わたわたと外に出た。

*