SNOW SMILE (ページ50)

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しっとりとした湿気と冷気を孕んだ風が
彼女の髪を揺らす。
前より短くなった髪。彼女の頬にかかる髪を
優しく梳かす。

「やっと直接、見れた」

彼女の髪を触っているオレの手を
彼女の手が掴んだ。

『あったか。ビール飲んだ？
わたしも飲ませてくれるんでしょ？行こ』

手を繋いで歩きだす。
彼女の耳に口を寄せて言った。

「後でふたりで抜けよな」

お返しとばかりに彼女もオレの腕を
引っ張って囁く

『何なら、もう抜けちゃう？』
「.....」

「思ってもない事言うな。
　どうせ緊張してんねやろ」
『う。バレてる。だって知らない人いるの
　苦手なんだもん』
「吉瀬さんは、もう来てたで。
　....煙草吸ってたけど」
『もう。煙草やめた方がいいって
　言ってるのに。
　いつも、はいはいって言って
　全然聞かないんだから』

口調は怒ってるのに楽しそうに話す。
そして相変わらず、ええ声。

皆のところに近づいて
すぐ濱家が手を振っているのに気がつく。
手を真っ直ぐ伸ばして振ってくれている。
手を振り返しながら、少し笑った。

「何か、でかない？5メートルはありそう」
『あははは。そんなにないでしょ』

目を合わせてふたりで笑った。
何気なく好きが溢れた。

「めっちゃ会いたかった」
『わたしも、ゆずる』

Aが素直だったから
一瞬だけ唇に触れた。

遠くからオレ達に向かって
誰が言ったかわからん声で

“そこー！イチャイチャすんなー”

って叫んでんのが聞こえて
また、ふたりで笑った。

春が来て、暖かくて柔らかい風に吹かれる君を
夏が来て、じっとりとした熱気に包まれた君を
秋が来て、少し人恋しくなる空気を纏った君を

また、
冬が来て、冷たい風に負けじと夢にむかう君を

ずっと見ていられたらいいなと思った。

これから増えていく大切なものと同じように
今まで持っていた大切なものも
ずっと変わらずにありますように。

いつかの神様にお願いしたい気持ちになった。

Fin.

「SNOW SMILE」 End.

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