SNOW SMILE (ページ49)

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「そのカッコ寒いやろ。オレのダウン
　あっちに置いてるから着とけよ。
　オレ、火の側やから暑いねん」

彼女は照れたような顔で、ありがと
と言って戻って行った。

「あいつ、舌出してたやろ」
「気付いてたん？」
「あいつの事は何でも分かんねん」
「言い方きついんちゃう？
　もっと、優しくしてやったら？」
「へこんだ顔もめっちゃ可愛いねん」

そう言ってヘラヘラと笑って
めっちゃ食う癖に肝心なトコ
肉つかへんねんなーと返事に困る事を言う。

「あ、ゆずる、変な想像すんなよ」
「なら言うなよ！」

スマホがブルッと震えた。
もうすぐ着きそうというメッセージが届いた。

「ちょっと、迎えに行ってくるわ」
「彼女？オレ会うの初めてかも」

残りのビールを飲み干して
すぐ戻ると言って歩きだした。

少し離れた所で、吉瀬さんと賢ちゃんが
タバコを吸っていた。
二人して仲良さそうに話している。
吉瀬さんのzippoを賢ちゃんが羨ましそうに
見ている。
喫煙者同士、話が合うんかなあ。
稲田がその周りをウロチョロとしてるのが
可笑しすぎた。

気の早い花見客は他にもいて
大学のサークルかなにかの
若い連中が騒いでいる。
さっきすれ違った男女カップル。
綺麗な黄色いマフラーを巻いた彼女と
スラッとして長身な彼氏は
腕を組んで楽しげに笑いながら
連中の輪の中に入っていった。

公園の出入口でも4人の男女に目がいった。
派手な髪色のイケメン男子と地味目男子。
これまた誰がみても可愛いと思う女子と
クール系女子。

....あれ、オレ。カップルばっかり
目がいくのはきっと自分が浮かれているから？
心の中で苦笑いする。
Aと会うの久々で
ホントは今日めっちゃ楽しみにしてた。
ヤバい、顔がニヤケてしまう。
ほっぺを指でマッサージする。

遠くから歩いて来る彼女の姿を見つけて
ほっぺマッサージを速めた。

『お待たせ』
「お疲れ。....やっと会えた。髪、似合う」
『だいぶイメージ変わった？』

茶色のゆるふわパーマから
黒髪のストレートボブへ。
今やってる声優の仕事のキャラクターに
寄せた髪型だそうだ。

『サブキャラだけど、イメージソングとか
　出してくれるみたいで』
「順調そうで、良かったな」
『うん。ありがと。
　以前はお世話になりました』

オーディション落ちてへこんだ彼女と
寒空の公園で何時間過ごしたか。
結局、元気づけることには成功した
と思いたい。

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