＊ ページ32
....
「『 わっ！ 』」
「なに、ふたりでこそこそオレの噂話してんの？」
いきなり入ってきた河井氏は、そのまま後部座席に座った。
「稲田、席変われ。道わかんのか？」
「Aさんの隣は渡しません」
また、はじまった．．．。ため息をついて話をかえる。
『河井氏、大丈夫？寝坊？』
「あ、ごめんな。Aちゃん、またこんなこと頼んで
そうやねん。変な夢見て」
そう言ってさっきまで見ていたであろう夢の話をしてくれた。
みんなでバーベキューをしていたらしい。
「水田や、賢ちゃん、秋山さんもいたかなあ。各々彼女もいてて。
オレは誰かを待ってんねんけど、なかなか来んくて。
まだかなあ、オレも肉食べたいなあ．．．っていう夢」
「なんなんすか、それ。待ってたのは彼女でしょう？今の」
『さっきも話してたけど、河井氏彼女出来た？』
振り向いて話かけると、顔をじっと見られる。
話しかけた手前、わたしも目をそらせない。
．．．．。
うわっ、やっぱり河井氏、男前だなあ。
なんでじっと見られてるか、わからないまま
このままだったら、ヤバい．．．また、ドキドキしてしま．．う
「河井さん！なんなんですか、ほんま油断ならん」
『ホント、ヤバかった。油断ならない．．．』
「なんやねん。ふたりして。彼女やないよ。まだ」
「『 まだ？ 』」
「まだ。Aちゃん、今度またご馳走するわ。お礼」
『え？ホント？』
「Aさん、嬉しそうにしないっ」
『あはははは』
「Aちゃん、その時に会わせたい人おるから」
『え？だれ？』
「それは、まだ内緒」
『．．．．．』
誰だろう．．．．。
詳しく聞きたかったけど、ふたりはそのまま仕事の話を始めた。
『．．．．．じゃあ、出発しまーす』
「「 お願いしまーす 」」
声が揃った。
やっぱ、息ぴったり。
笑いを噛み殺して
ギアをドライブに入れた。
Fin.
....
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作者名：優朱 | 作成日時：2020年12月8日 21時
