夢から醒めても / なおき ページ30
……
「Aさん、寒いんですけど」
『ああ、悪い、悪い』
短くなった煙草を消して、窓を閉めた。
「いい加減、煙草やめたらどうです？今どき肩身狭いでしょ」
『そうなんだよね。喫煙者に優しくない社会だよねえ。
電子タバコにするかなあ』
「なんか、流行りにも乗り遅れてるし
そういう事でもないんですけど。
zippoで煙草吸う人、もはや絶滅危惧種ですやん」
『火を付けたときのオイルの匂い好きなんだけどな』
「ホントAさんって男脳ですよね。あのときだって·····」
苦笑いして、なおきを見る。
スイッチが入ってしまったなおきは
自分の世界に入ってブツブツ言っている。
『しっかし、今年は雪が多いね』
「あ、話かえた····」
窓の外では、また雪がチラチラ降り始めていた。
あのクリスマスの日の雪は、一晩中降ることはなく
朝には全て溶けていた。
寝て起きたら何もなくなっていて、何だか
夢の中の出来事だったみたいで
しばらく、頭の中がふんわりしていた。(なんか、へんな夢も見たし)
最近、やっと現実に戻ってこられたのに、また、降りだした雪。
都会においては、数センチの積雪で交通機関は大いに乱れ
電車に至っては、遅延、運休のオンパレード。
タクシーは、回線がパンクして電話が繋がらないことも
あったり、なかったり。
で、SOS要請を受け、出動した次第であり
河井氏の家の前、車の中でなおきと待機中である。
『．．．．河井氏、遅いね。珍しく』
「河井さんは····どうせ女の子とイチャイチャしてんでしょ」
『．．．．仕事前なのに。そんなことないでしょうよ』
「僕はAさんと、ふたりきりがよかったのに。
河井さんは邪魔です」
『いやいや、ドライブデートじゃないから。
仕事場に送るだけだから』
なおきは、あの日以来、わたしの前で河井氏の事を目の敵にしてる。
わたしが不覚にも河井氏のギャップにドキドキしたから。
『．．．．．．』
『なおき、わたしもう、河井氏の事はなんとも思ってないよ』
「．．．本当ですか？でも、河井さんは油断ならないから」
「Aさんは、僕のなのに」
『ふふふ。ありがと』
「え、何か素直ですね。気持ちわるっ」
『．．．．なんなのよ。気持ち悪いって
なおきは、いつもストレートだから、わたしも
それに倣っただけなのに』
『なおきと一緒は居心地いいよ』
....
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作者名：優朱 | 作成日時：2020年12月8日 21時
