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子供の頃滑ったことあるはずなのに
その感覚が全くよみがえってこない。
大人になってからの弱気な自分がでてるみたいで、へこむ。
いつも自信がないわたし。
隣でだいきは、スイスイ滑っている。
失敗すんの、こわくないのかな。....運動神経お化けめ。
たくさんの人の憧れと理想を纏っている彼が大好きだ。
それを感じさせない、飄々とした態度も。
自分もそれに倣いたいと思うし頑張りたい気持ちもある。
だけど、わたしの表面を覆っているのは今みたいな頼りない自分。
「A！」
名前を呼んで、手を取ってくれる彼に
ついていくだけでいいのだろうか。
また、転びそうになるわたしを、しっかり抱き止めてくれる。
「転んでもいいから！楽しも！」
彼の底抜けの笑顔を見ていたら、自分にも出来る気が
してくるから不思議だ。
転んでも、また立ち上がればいいのか。
わたしの隣にはいつも、支えてくれる人がいるから。
勢いよく手摺から離れて、だいきのところへ！
....行こうとしたけど........また、転んだ。
「あはははは、A大丈夫？」
笑いながら手をひいてくれて、勢い余ってだいきの胸に
とびこんだ。ぎゅっとしてくれて、暖かくて甘いため息がでる。
だけど、すぐにここが外だって思い出して、急いで離れようとした。
「急に動くと、また転ぶから！」
強い力でひきもどされた。
「大丈夫。皆見てないから。オレたちの事なんか」
そう耳元で言われて、周りをみると
広いリンクにまばらにいるお客さん。
ナイト営業という事もあって、カップルばっかり。
それぞれが、自分達の世界に浸って楽しんでいる。
スケートはふたりの距離を縮めてくれる遊戯だったのか。
『そっか』
と、何だか納得してだいきの腕を引き寄せた。
それからゆっくりふたりで、手を繋いで滑った。
途中気を抜くとバランスを崩すから
全然リラックスして滑れなかったけど
そんなわたしの顔を見て笑うだいきと一緒に笑った。
『あー楽しかった』
『ね、いっぱい笑ったら喉渇いちゃった。ちょっと
お茶して帰らない？』
自然にだいきと腕を組んだ。
『わたしに付き合わせちゃって
あんまり滑れなかったよね。ごめんね』
「いや、楽しかったよ」
そういって、むふふと笑うから
『どうしたの？』
って気になった。
「....いや、....作戦大成功だったなって」
『作戦？』
「........」
....
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作者名：優朱 | 作成日時：2020年12月8日 21時
