貴方には、かなわない / だいき ページ24
....
明日。暖かくて動きやすい格好で来て！
そう連絡が来て、指定の場所で待っているわたし。
....ここって....。
「Aー！」
大声で私を呼んで、向かってくるあなたに目がくぎ付けになる。
うわぁ。
カーキのモッズコートに細身の黒いパンツ。
インナーはわたしがクリスマスにあげたセーター。
手編みじゃなく既製品だけど、暖かそうで手触りがよくて
少し明るめの色を選んだ。
彼がいつも貰ってる物に比べたら、きっと地味な服
だけど、私と会う時に着てきてくれて、嬉しい。
いつもの彼の派手めの格好が苦手なわたしからすると
今日はおとなしめ。
いや、おとなしめだなんて....、お釣りがきちゃう。
派手じゃなくても充分、カッコいいんですけど....。
私の大好きな髪の色は、ふんわりしたニット帽に隠れていて。
それは、致し方なし。
そんなニコニコしながら向かってくる彼氏って。
しかも、その笑顔が女子よりかわいいって、どうなのよ....。
「わりぃわりぃ」って言って。
「じゃっ行こっか」って手をひかれる。
『ねえ、だいきは、やったことあるの？』
気になって、聞いてみる
「ん。やったことないけど、オレに出来ないものはないっしょ」
相変わらず、自信満々。
やったことあるのかなって、思ったのに。...どさんこ、だから。
違うのか。
「Aは？」
って聞かれて。
『小さい頃少しかな』
「そ、まあ任せといて？」
彼は口の端をもちあげて、静かに笑った。
『あー、だいき、ちょっと待って待って待って』
「あはははは、Aずっとそこに居たって上手くならないから！」
『わかってるけど！こわい、こわいから！』
急に腕を引っ張られて、バランスを崩してしりもちをつく。
『いたたたたた』
「ごめんごめん」
だいきは、笑いながら手を引いておこしてくれた。
『なんか、ものの数分で上手になってない？
ホントにやったことないの？』
「スケートなんてバランス、バランス」
おこしてもらったのはいいけど、まだフラフラしている私は、
だいきの両腕を掴んだまま。
知り合いからチケットを貰ったからとやってきたのは
屋外スケートリンク場。
仕事終わりでの待ち合わせだったから、閉館間際の時間帯。
だけど、日が落ちてライトアップされたリンクは綺麗だった。
だいきは、最初派手にスッ転んだものの、コツを掴んだようで
もう、わたしのコーチみたいになっている。
....
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作者名：優朱 | 作成日時：2020年12月8日 21時
