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....
『た、隊長！大変です』
「どうした？A隊員？」
『ゆ、雪が降ってます！』
「....どうりで、冷えるわけやな」
『....隊長！....外行きたい』
「........」
「は？無理無理無理無理。外寒いから」
『えー、でも、外行きたい』
「いや、無理やってぇ」
『あー、じゃあコンビニ行こ。肉まん食べたい』
「いや、寒いからぁ、A」
『........じゃあ、ひとりで行きます』
「........ああ、もう。わかったから。ホンマAはこうなったら
頑固やからなあ」
『いっしょ行ってくれる？ありがと』
「もう、着替えんのめんどい」
『いいよ。部屋着で、すぐそこだから。うえからダウン
着ちゃえばわかんないし』
「それもそうか。....でも、Aは、それじゃダメ。
耳が寒そうだから俺のニット帽貸してやる」
『ふふふ。ありがと』
ドS軍曹の癖に、こんなとこ優しいんだよね。大好き。
ふたりでモコモコして玄関を出た。
いつから降っているのかわからない雪は、外の世界を
うっすらと銀色に染めはじめていた。
『わー、少し積もってるよー。綺麗』
「Aって、ホンマ犬みたいやな。尻尾振って
飛び回りそうな勢いやし」
『あははは、だって雪降ってたら興奮するじゃん。外歩きたいし。
じゃあ濱くんは猫？』
「炬燵で丸くなりたい」
『ホント、寒がりだよねー』
「Aちょっと、寒いからくっついてて」
....前、こんな事あったなあ。
『ねえねえ、濱くん！昔さ、付き合いたての頃、クリスマスに
イルミネーション見に行ったよね』
「え、ああ、めっちゃ寒かった日やろ。でっかいツリーの」
『そうそう。綺麗だったよね』
「俺の仕事終わりで、ちょっと夜遅くて、めっちゃ寒かった」
『....なんかさあ、寒いしか覚えてないの？』
「え、いやちゃんと覚えてるよ。あたりまえやん」
『ホントかなあ』
結局、あの年思った通り、濱くんは次の年、超多忙で
ふたりで出掛ける事はなかった。
その後は行けたり、行けなかったりで。
だけど、ふたりで同じ時間を過ごすのが少しずつ
積み重なっていってから出掛ける事には
そんなに固執しないようになった。
今はこんな風に、ちょっとした事でも幸せを感じている。
寒いの苦手なのに、ちゃんと私につきあってくれるトコとか。
濱くんの強い口調で言われた言葉に、へこむ私を
ちゃんとフォローしてくれるトコとか。
....
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作者名：優朱 | 作成日時：2020年12月8日 21時
