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しんじに、じっと見つめられる。
穏やかに目を細められる。
目が離せなくて、少しずつ鼓動が大きくなる。
周りの空気が、だんだん甘くなっていくのが分かる。
「A」
柔らかく、甘い声。
隣から伸びてくる大きな手。髪を撫でられる。
カチリ、音がした気がした。
「Aが、ドルチェ」
甘い声は私の聴覚を刺激する。ゾクリとした。
痺れて動けなくなって、思考をのっとられる。
お嬢さん踊りませんか？と、くまさんが私を誘う。
くまさんの皮を被ったしんじ。
真ん丸の目の奥で何かが揺れる。
しんじの目の中にオオカミがいる。
部屋におかれたクリスマスツリー
電飾がチカチカと瞬いているのが
目の端でみえる。
私は、手を伸ばしてしんじの首に抱きつく。
ゆっくり、ゆっくり....。
床に押し倒して見下ろす。
しんじの目の中にうつるオオカミ。
さしずめ、私は赤ずきん？
オオカミにまるごと食べられる運命の。
違う。
オオカミは、わたし。
じんじの瞳にうつるオオカミはわたし。
お嬢さんの皮を被ったオオカミのわたし。
「えっちなA、好きやで」
ほら、もう私をあとに引けなくする。
最後、だめ押しの、引き金が引かれる。
『ありがと』
そう答えて、私は
愛しい、愛しい、大好きなくまさんの
柔らかそうな唇に噛みついた。
Fin.
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作者名：優朱 | 作成日時：2020年12月8日 21時
