第六夜..../S.mizuta ページ12
....
合鍵で玄関を開ける。
とたんに香ってくるお肉が焼ける匂い。
うわぁ〜いい匂い。
『おっ邪魔しまーす。しんじー、きたよー。』
リビングのドアを開けると、キッチンで難しい顔をしてる
彼氏がいた。
『なに作ってんの？
おわー、チーズインハンバーグだあ。これって、レシピ本に載ってる
やつでしょう。美味しそーう』
「レシピ本15ページや、いっしょに載ってる
混ぜるだけコーンスープも作ったで」
『え、ページ数まで言う必要ある？』
「読んでる人に、サービス、サービスぅ」
『読んでる人って？』
「............」
『え、しんじレシピ本自分で買ったの？あはははは』
「これは後でAにやる」
『えー、持ってるよー』
『そんなことより、』
(....そんなことより？)
『じゃーん。作ってきました。ケーキ！』
「おお、凄いやん。みせてよ」
『もっちろん。もう、この入れ物探すのに苦労したんだから！』
どうだ！ってケーキが入ってる箱の蓋をあけた。
苺の生クリームホールケーキ。
「....デコレーション、地味っ」
『あー、言ったなー。プロじゃないんだから
そんなに綺麗にできないよ』
「あははは。Aは、不器用やからなあ」
「そうだよ。良くやったほうだよ。あははは、味は自信あり！
苺もさあ、奮発して大きいの買ったし」
「そりゃ、楽しみやなあ」
しんじは、笑うと目が線みたいになる。
くふふふふって笑うこの顔が、大好き。
たまに引くくらい細かい性格でてくるけど
ずっと笑ってたらいいのになって思う。
丸っこくて、柔らかくて、くまさんみたい。
私たちの出会いも、童謡の森のくまさんみたいに
私が落としたイヤリングがきっかけ。
私を追いかけて、持ってきてくれる姿を、今も時々思い出して
くくくっと、笑ってるのは内緒。
「なに笑ろてんの？料理出来たからもってって」
『はーい』
怪しまれないように、テキパキと動いた。
「『いただきまーす』」
んーーー、ハンバーグおいっしい！さすが、しんじ！
『めっちゃ美味しいよ。おいしんじー』
「おいしんじ、いただきましたー」
『あははは』
相変わらず、バカやってる私たち。
....
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作者名：優朱 | 作成日時：2020年12月8日 21時
