＊ ページ11
……
「さっき、河井さんにドキドキしたでしょ」
『……………………した。あ、でも今度謝らなきゃ。
私も、余計なこと言っちゃった』
「………………それは僕から言っておきます。河井さんには
あれくらい言ったって平気ですけどね」
「そうじゃなくて………………
河井さんじゃなくて僕にドキドキして下さい」
「この雪、さっきも少し降ってたんです。
Aさんと見たかったから
急いで外に出てもらったけど、やんでて……。
ついてないと思ったけど……」
「僕、結構もってるんですよ」
『あははは、直樹こんなトコで私なんかに使ってどうすんのよ。
使うべき所、ちゃんとあるでしょ』
「僕はAさんに使いたいと思ったんですよ」
『…………………………………』
雪はまだやみそうにない。
雪を積もらせていく公園の木を見て
大きなクリスマスツリーみたいだなと思った。
「Aさん、今日はタバコ吸わないで下さいね」
『え、なんで？』
「…………………………。こんな素敵なシチュエーション、もう
キスするしかないでしょう？」
「覚悟、して下さいね」
え？
『待て待て待て！いやちょっと………………』
キスって覚悟いるものだった？私が知らない間にそうなった？
第一、宣言してからする？私、キスする前提？
ああ、なんか今日はいろいろありすぎて頭まわらない。
「Aさん、いきますよ……」
『ちょっ直樹、待って。今、思考が追い付かなくて………………
…………………………と、とりあえずさ……ごめん。一服させて？』
「もー、Aさん！」
苦いキスをしたかどうかは、ふたりだけの秘密。
Fin.
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作者名：優朱 | 作成日時：2020年12月8日 21時
