この子を守るためならば 〔中也〕 4 ページ4
* * *
嫉妬の炎が私に迫る。
もう全方位を囲まれて、
私の身体はまだ焼けていないけれど、そうなるのも時間の問題。
なるべく吸い込まないようにはしているけれど、上からは煙が迫っている。
熱い。苦しい。
私を繋ぐ鎖が熱を持って、私の手首と足首を焼く。
あぁあ、私だけでは到底非力で、子どもどころか自分一人も守りきれない。
助けて、中也。
* * *
中也が廃屋に着いたとき、火の手はAの衣服に及ぼうとしていた。
「Aーーーーーーー!!」
中也は部下の制止も振り切って、今まさに焼き尽くさんとされている廃屋の中心へと飛び込んでいった。
炎と煙を異能で切り裂くようにして払い除けながらAを捜す。
「Aッ!」
「ちゅう…や…?」
炎の中心に居るAは必死に身を低くし、縛られる不自由な身体でお腹を守る姿勢をとっていた。
緊張と汗で滲んだ表情も、中也を見て安堵したのか、少し緩んだ。
中也はAに駆け寄り、Aを縛り付ける鎖を異能で破壊した。そして流れるような動作でAを抱き上げ、廃屋から脱出した。
「中也さん!」
「中原幹部!」
「医療班を寄越せ!」
二人が外に出ると、数人の黒服は二人に駆け寄り、誰かは医療班を急かした。
「中也!A!」
丁度到着したらしい紅葉も二人に駆け寄る。
「姐さん…!」
「Aは無事かえ?」
「はい」
「後は煙を吸い込んでおらぬかが心配じゃな」
「中原さん、お手当を」
「あぁ、頼んだ」
医療班が中也からAを預かり、手当を始めた。
だが、どうしたって火傷の痕は残るだろう。撃たれた両脚の傷痕も。
「…あね、さま…」
「まだあまり喋るでない、A」
「っ、私…まだ、中也に云えてない、よ…」
紅葉も中也も、Aが何のことを云っているのか察した。
けれどその子は今、生死の境を彷徨っているのだ。
苦しげなAの表情に、中也は一瞬泣きそうになったが寸前で堪えて云った。
「全部姐さんから聞いちまったよ、莫迦。ったく、二週間も黙っていやがって。俺が知ってりゃ、こンなことには…。
だから、A、死ぬなよ。それと絶ッ対ェ、二人とも死なせねぇ」
「…うん…」
中也の決意の込められた瞳に、Aの表情が和らいだ。
「姐さん」
低い声で中也が問う。
ーーー
次へ…
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嘘吐き姫(プロフ) - 大丈夫ですよ。了解致しました、謹んで書かせていただきます。レスありがとうございます! (2020年2月4日 16時) (レス) id: 346988f6d0 (このIDを非表示/違反報告)
リアビーバ- - あっ!すみません・・・コメントできなくて・・・!えっと夢主ちゃんは二人の想いに気づいてないほうがいいです! (2020年2月4日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リアビーバ-さん» どちらでも大丈夫でしたら、私が勝手に書いちゃいます…。 (2020年2月3日 23時) (レス) id: ad6d962da2 (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リアビーバ-さん» 最後は夢主ちゃんは二人の想いに気づいた方がいいですか?それとも、気づかないまま…ですか? (2020年2月1日 16時) (レス) id: ad6d962da2 (このIDを非表示/違反報告)
嘘吐き姫(プロフ) - リアビーバ-さん» リクエストありがとうございます、承りました! (2020年2月1日 16時) (レス) id: ad6d962da2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:嘘吐き姫 | 作成日時:2019年10月14日 15時