一番上の兄の話 ページ3
母の口から発せられた衝撃的な言葉に、イルミは過去類を見なほどにフリーズした。
「え。今、なんて言ったの？」
念のためにもう一度。
改めて母に聞き返す。
普段見ることがないだろうイルミの動揺した姿に、母・キキョウは煩わしそうに眉をひそめる。
「何度言わせる気なの？私は、アリアちゃんの婿候補を連れてきなさいって言ったの」
アリアの婿候補。
すなわち、妹の結婚相手を自分が連れてくる。
え、アリアが結婚する？
しかも、相手は俺が連れてくるの？
頭を中をぐるぐると色んな思いが巡るが、いの一番にイルミが視線をやったのは母の隣に座ったままのアリア張本人だった。
切れ長の青い目は、いかにも無気力そうな半開き。
口は真一文字に結ばれていて、そこから言葉が出てくる気配はない。
元からアリアはかなりの色白だが、その肌が血の気よく色づくこともなければ、逆に青ざめることもない。
「…アリアはそれでいいの？」
結婚とは、人生の大切な転換期だ。
ましてや女性にとっては熟慮すべき重要なイベントである。
流石のアリアも、自分の結婚には思うことがあるはず。
じっとイルミが再びアリアに視線を送ると、薄い唇が言葉を発した。
「どうでもいい」
そうか、どうでもいいのか。
自分の結婚なんて何も頓着しないと。
「……は？え、どうでもいいの？」
「どうでもいい。何か相手とか自分で選ぶのめんどうだし…兄さんが選んだ人なら大丈夫だろうなーって思ったんだけど」
いやいや、人生の重要なポイントを兄に任せちゃ駄目だろ。
え、「めんどう」っていう理由で片付けちゃっていいの？
アリアに聞きたいことは山ほどあるが、いかんせんこの妹。
やることなすこと「めんどくさい」の無気力人間なのである。
まだ自分の針で操った方がまともな人間になりそうだが、そんなことをしたら両親に何をされるかわからない。
「他でもないアリアちゃんもこう言ってることだし。相手はきちんとした人にしてね。候補を決めたら、イルミとアリアちゃんで相手に会うこと」
相手が一人に絞れたら、私とお父さんに報告するのよ。
そう言って、アリアの頭を一度撫でた母は部屋から出ていった。
残されたのは自分とアリア。
たった今、イルミがアリアの残りの人生の有様を決めることが決定したのだ。
……あ、やばい。
俺、アリアに紹介できるような友達1人もいない。
この時ほど、自分の交流の無さをイルミが嘆いた日はなかったという。
- 金 運: ★☆☆☆☆
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(名前)(プロフ) - めっちゃ面白くて1番右の星押そうと思ったんですけど間違えて反対押しました。懺悔致します。続き、待ってます。 (2020年1月22日 19時) (
レス) id: ee36327b5d (このIDを非表示/違反報告)
オレンジ - もう本当に面白かったです。いつの日か続きが読めることを楽しみにしてます! (2018年2月18日 11時) (レス) id: 471f321dcd (このIDを非表示/違反報告)
こけし(プロフ) - 霧ちゃんfight！ (2017年8月24日 11時) (レス) id: 7f4d6f5010 (このIDを非表示/違反報告)
零 - もうヤバイです 笑いが絶えませんww 最高です！ 夜中なのにめちゃめちゃ笑っちゃいましたw 更新頑張ってください 待ってます！ (2017年8月16日 1時) (レス) id: 102168a696 (このIDを非表示/違反報告)
カタミ - やけに面白いなと読んでいたら、あの旅団の師匠シリーズの作者さんだったのですね！私、1・2年前くらいに読んでました!!これからも頑張って下さい!! (2017年8月9日 20時) (レス) id: ebc33a095d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霧月 | 作成日時：2017年2月15日 13時
