彼女を呼ぶ声 ページ19
______________
______声が、聴こえる。
擽るような柔らかな声が、霞んだ意識を包み込むようにあたたかく響く。
(……だれ？)
徐々に浮かび上がる意識とともに、響く言葉の輪郭もところどころあらわれていく。
「____は、_____A。あなた____、わ____の、
________________」
(…なに、だれの声？)
言葉の欠片を拾おうと耳を澄ませたAは、自分の身体が動かないことに気がつく。
指先どころか目蓋さえ動かせず、鉛のように重く固まった身体。
感じるのは心地よいぬくもりと、柔く鼓膜を震わせる女性の声だけ。
(誰か私を、呼んでる……？)
声を出すことすら出来ないAは、せめて断片的な言葉を聴き取ろうと、まだ靄のかかる意識を集中させる。
「……A、どうか___だけは、________」
まるで祈るかのようにAの名を呼んだ声。
すると先ほどまで身体を纏っていたあたたかな空気はいつのまにか消え去り、頬に冷ややかな風が触れたかと思うと______
「…っ、う………」
____ギィン！！
まるで金属を硬質な材で思い切り叩くかのような鋭い頭痛。
日差しの降る若草の地面から、唐突に冷たい暗闇へと突き落とされたかのような感覚、Aは小さく呻き声をあげた。
時間をかけて持ち上げた目蓋の向こうの光景に、霧がかった意識が一気に輪郭をあらわした。
そして、見開かれた彼女の瞳に映ったのは、堅い地面に倒れこむライトとセフィロス。
そして粘液のような魔物の身体に包み込まれるアンジュの姿。
「なっ……、にこれ、」
思わず口から飛び出した声は掠れて引き攣り、側にいたサンディがやっと拾えるほどだった。
「あっ、A！よかった〜〜起きてくれて！
あのパンデルムとかいうキモい奴がヤバくてど〜にもなんないのヨ！」
あたふたと羽根を翻していたサンディがAの肩に抱きつく。
「みんなアイツの呪い？みたいなのにかかっちゃって、アタシだけでどうしろっちゅーのってカンジだったんだから〜！！」
「サンディ…」
よほど心細かったのであろう、Aの肩口から離れないサンディ。
そんな彼女の様子に少しだけ緊張の解れたAは、まだ幾分か回転し難い頭で思考を巡らせた。
(みんなを…みんなを救うには、どうしたら…)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Mayu(プロフ) - ルリリさん» ルリリさんありがとうございます！そのお言葉が嬉しくて筆を進めてしまいました。素敵なパーティですね、パラディンとバトマスかっこよくて大好きです！ (2021年6月11日 1時) (
レス) id: 0dae578ed3 (このIDを非表示/違反報告)
ルリリ - 更新楽しみにしてます！この作品すごく好きです！ドラゴンクエスト9の小説少ないので嬉しいです！！がんばってください！私のパーティー(ラルル(私）パラディン、マティカ・バトルマスター、イクミン・魔法使い、アーミッツ・僧侶）です！ (2021年4月9日 22時) (レス) id: b909ab9878 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - あいかさん» コメントありがとうございます！既にストーリーエンドまで構想を練っておりますので最後まで書き続けるつもりでおります。是非楽しんで頂ければと思います^ ^！ (2017年11月23日 11時) (レス) id: 6fc3705b77 (このIDを非表示/違反報告)
Mayu(プロフ) - わらびもちさん» わらびもち様、コメントありがとうございます！亀更新になりますが楽しんで頂ければ幸いです^ ^！ (2017年11月23日 11時) (レス) id: 6fc3705b77 (このIDを非表示/違反報告)
あいか(プロフ) - この小説は、まだまだ続きありますか？最後まで読んでみたいので更新待ってます！頑張ってください！！ (2017年9月2日 7時) (レス) id: 1722f61193 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Mayu | 作成日時：2014年11月2日 20時
