彼と首飾り1 ページ38
長編光へ虹の橋をと双翼の智将の間の話。
邪神を斃してからしばらく経っているぐらいの時期です。
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「ねえA、貴方に私付きの侍女をお願いしたいのだけど、いいかしら?」
執務として書類をしかるべき所に届け、その帰りで廊下を歩いていたところに突如声掛けされた、主君であり親友であるマルティナの言葉。
考えるまでもなく、頷いた。
「もちろんよ!貴方が生きていると分かった時から、ずっとそうしたいと思っていたから」
「有難う、A!騎士である貴方に侍女も頼むと言うのは、正直気が引けたけど、やっぱり一番気心が知れた貴方がいいから…」
マルティナの言葉が、Aにはとても嬉しかった。
「それで、安請け合いをしてしまったのか」
嬉しいままに打ち明けると、Aの上官であり恋人であるホメロスは、呆れた様に溜息を吐いた。
「何よ、何か問題でもあるの?」
「大ありだ。お前、騎士をやめるつもりか?」
「何を言っているの?兼任するに決まっているじゃない」
言い返すAに、ホメロスは声をやや荒げて言った。
「お前、騎士と侍女を兼任するなど、容易ではないぞ!」
「覚悟しているわ」
強い決意を込めた瞳に、ホメロスは黙り込む。
やがて軽く溜息を吐き、了承した。
「わかった。どんなにやめろと言ってもお前は聞き入れぬだろうな。それはよくわかっている。だが、一度そう断言したからには、後で覆す事は許さぬぞ!」
「ええ」
ホメロスの突き刺す様な言葉に気圧されず、Aは再度頷いた。
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作者名:遠山すずか | 作成日時:2018年10月31日 10時