ディナーデート6（完結） ページ37
だがホメロスにとってはこの上なく辛い日となってしまい、それにもかかわらず周りは楽しむ空気に溢れており、それが辛さに拍車をかけたのだろう。
重い過去を聞かされ、Aはフォークを握ったまま動けなくなってしまう。
だがホメロスは、表情を和らげて言った。
「お前がそんな顔をするな。暗い話をして済まなかったな。せっかくのデザートだ、味わって食え」
そう言って自分も食べ始める。
Aはこくりと頷き、ケーキを口に運んだ。
生地がしっとりとしたケーキも、歯ごたえがある新鮮なフルーツもお腹に染み渡る美味しさだった。
会計を済ませたホメロスとAは、人通りが少なくなった城下町の通りをぶらぶらと歩いていた。
Aは躊躇いながらもホメロスに謝った。
「さっきは嫌な事訊いてごめんなさい。それと…話してくれて、有難う」
それを聞いたホメロスは口元に笑みを浮かべて言う。
「気にするな。私が勝手に話した事だ。お前には聞いて欲しいと思ったからな」
「え？」
戸惑うAに、ホメロスは続けた。
「それに、今はそれほど嫌な日でもない。こうしてお前と過ごせたからな」
そう言いながら背を屈め、Aに触れるだけの口付けをする。
「あ…」
Aが頬を赤くすると、意地悪な笑みを浮かべて追い打ちをかける様に、耳元で囁いた。
「クリスマスに限らず、俺としてはいつでもお前と過ごしたいのだが」
「そ、それは…私もそうだけど…っ」
かかる吐息を感じながらAはしどろもどろになって答える。
「俺の話を辛く思ったのなら、もう少し傍にいて慰めてくれないか？」
「……！」
ホメロスの言葉の意味を感じ取り、Aは文句を言う。
「同情されるのは嫌いなくせに」
「今に限っては嫌いではない」
すかさず言い返されて言葉を失う。
そんな恋人を少し憎らしく思ったが、結局それ以上に愛しているのだなと、ホメロスには敵わないとAは密かに溜息を吐いたのだった。
――――――――――――――――――――
あとがき
２人きりの幸せな時間を頑張って書いてみました。
最初ホメロスのコートは黒で考えていたのですが、本人の好きな色を考えたらやはり白かなと思い変更しました。
ストーリーは秘め事ページへ続きます。
18歳未満及びここまでの方にはこの場で、
Merry Christmas！！
素敵なクリスマスをお過ごしくださいませ☆
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作者名：遠山すずか | 作成日時：2018年10月31日 10時
