始まりの出会い5 ページ29
「それでは、マルス殿にグレイグ、剣を取って構えてください」
審判を任された騎士が、手を挙げて試合の準備を促した。
マルティナとAは勿論、他に訓練をしていた騎士たちもいつの間にか集まっている。
デルカダールきっての騎士マルスと、将来を特に期待されているグレイグ、ホメロスの手合わせを見たいがために集まって来たのだった。
まずはグレイグがマルスと対戦する事になった。
「それでは、試合開始!」
「ぬおおおっ!」
試合開始の合図と同時に、グレイグがその巨体をいかしてマルスの懐に飛び込もうとした。
だがマルスはその剣先が到達する前にひらりとかわし、グレイグの肩に向けて鋭い一撃を放つ。
グレイグもすんでのところでかわし、後方へ飛びのいてマルスとの距離をとった。
そして意識を集中させ、今度はゆっくりとマルスに接近し、剣を振り上げ、そのまま旋回させてマルスの腰を狙う。
捉えたとみんなが思った瞬間、マルスの姿が掻き消えた。
「な!?」
仁王立ちしたまま固まるグレイグの広い背中に剣先が突き付けられる。
審判も一瞬戸惑っていたが、はっと我に返り試合終了を告げた。
「…っ、そこまで!勝者マルス殿!」
肩を落としたグレイグが下がり、今度はホメロスの番。
グレイグと違い、背丈も体格もマルスとほぼ同じだ。
この人はどの様に戦うのだろう?
Aの興味がホメロスに注がれる中、試合開始の号令がかけられた。
ホメロスが剣の柄に手をかけた時、Aは初めて2振りの剣を腰に帯びている事に気付いた。
柄から抜かれた剣は2本とも細身で、何だか頼りない感じがする。
だがそんな印象は、次の瞬間Aの脳裏から消え去った。
「はあっ」
細い分鋭さがある剣は、その見た目に相応しくマルスの急所を的確に狙った。
Aの目にもムダのない、それでいて速い動きなのが分かる。
マルスはそれらをすべてかわし、ホメロスに負けずに鋭い一撃を放った。
ホメロスはそれを読んでいたかの様に、慌てる事無く双剣をクロスさせてマルスの剣を受け止める。
弾き返すと同時に双剣は互いに離れ、また別々の方向からマルスに襲い掛かった。
マルスは冷静に剣の動きを見定め、身体を捻るなどして双剣をかわし、柄の部分からホメロスの剣を弾いた。
「……!」
2本の剣を同時に奪われて丸腰になったホメロスの喉元に、先ほどのグレイグと同じ様に剣を突き付ける。
勝負あった。
「勝者、マルス殿!」
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作者名:遠山すずか | 作成日時:2018年10月31日 10時