ハロウィン3-祭りの喧騒の追憶6 ページ12
自分に対する不可解さをぬぐえずにいると、頭上からあたたかな笑い声が聞こえてきた。
「お、ホメロス。もしやAに一目ぼれか?」
「な…っ、違います!」
慌てて否定するホメロス。
だが少し頬が火照っているのが自分でも感じられた。
「あははっ、そうか。だがお前かグレイグが相手なら私たちは構わないぞ。ライマの子だから良妻賢母は間違いナシだ!なあ?」
「まあ、あなたったら。あなたの子ですから、戦士を志したらホメロスやグレイグの右腕になれるかもしれませんわね」
「おいおい、娘を戦士になんて発想する母親なんてそうそういないぞ」
娘に対して、戦士としては過大評価しすぎではないのか。
これが親馬鹿と言うものだろうか。
内心そう思ったが、あえて口には出さなかった。
「それではグレイグ、ホメロス、失礼しますわね」
「ライマとAを送ったら私も城に戻るからな」
そう言って仲睦まじい夫婦は、生まれたばかりの赤ん坊を中心に帰って行った。
その光景を見ていたホメロスは、先ほど見とれていた赤ん坊が心から羨ましく思えたのだった。
ライマと言う母親に恵まれた事。
そして、実の父の様に慕っていたマルスの元に実子として生まれて来れた事に。
「そうだったの…」
知らなかったホメロスの心のうちをまた聞かされたAは飲み食いする動きを止め、亡き父に思いを馳せた。
まあ、あの時はAと恋仲になるとは思わなかったが。
赤子のAに見とれた事は伏せて過去を話したホメロスは、内心そう呟いた。
だがもしかしたら、あの時に、既に無意識に恋をしていたのかもしれないとも。
ビバ・グレイプを飲み干し、ゆっくりと立ち上がってAに声をかけた。
「よければマルス殿達の墓参りに行くか?」
「え?」
目を見開くAに言葉を続ける。
「今の私達の事を報告したいと思ったのだ。せっかくの逢引(デート)なのだから別の場所がいいと言うのならそれでも構わぬが…」
「そうね、行きましょう。私もしばらくお参りしていなかったしね」
Aも立ち上がり、差し出されたホメロスの手を取り、気恥ずかしく思いながらも腕を絡ませた。
ホメロスはそんなAに穏やかな笑みを向け、額に軽く口付けした。
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作者名:遠山すずか | 作成日時:2018年10月31日 10時