ディナーデート1 ページ32
クリスマス企画の短編です。
騎士としての責務から解放されたひと時になっていたらいいです。
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「ふぅ、いい汗かいた」
秋も終わり、いよいよ冬が到来して寒さが厳しくなってきたある日の朝。
日課の朝の訓練を終えたAは汗をぬぐい、訓練場を後にした。
自室へ戻る途中でグレイグ、マルティナとばったりと出くわした。
「おはよう、A」
「おはよう、マルティナ、グレイグ。２人して訓練かしら？」
「ええ、朝やると特に気分がいいのよね」
照れもせずにそう答えるマルティナに、ご馳走様とAは笑った。
相変わらずマルティナを呼び捨てするAに、グレイグはもはや咎めてこない。
公私はきっちり分けているAだから、よしとしたのだろう。
「それはそうとA、クリスマスはどう過ごすの？」
「クリスマス？」
思わぬ質問に一瞬目を見開いたAだったが、そう言えばそろそろそんな時期だと気づいた。
幼い頃は両親と、両親を亡くしてからは城に引き取られ、マルティナ達とパーティーをしていたなと思い出す。
ユグノアが魔物に襲われ、マルティナが失踪してからはクリスマスの事などすっかり忘れてしまっていた。
そんな事をマルティナに伝えると、まあ私も同じだけどね、と肩をすくめて見せた。
「いつもと同じ様に訓練と城の任務か、非番になったらその時考えるかしらね。―――マルティナはグレイグと水入らずかしら？」
「そうしたいんだけれど、この人堅いから…」
そう言ってマルティナは、グレイグを渋い顔で見やる。
「私は城を守る将軍です。姫様のお誘いは嬉しい限りですが、もしもの事があったら…」
「ね？」
「あはは…」
グレイグらしいと思うのと、同時にマルティナを少し不憫に感じたAであった。
「まあ私の立場はグレイグに近いから、グレイグの言う事も分からなくはないけれどね…でも親友としては、一緒にいたいと言うマルティナの気持ちも考えて欲しいとは思うわ」
そう言ってグレイグを見ると、グレイグは目に分かりやすい狼狽の色を見せ、黙り込んでしまった。
そして、苦し紛れに思いついたらしい案をどうにかしてひねくり出す。
「で、ではこうしましょう。クリスマスの日は、任務をこなす私に、ずっとついていて頂くと言うのは…」
「いいの！？嬉しいわグレイグ！」
何とも色気のない事だが、それでもマルティナは嬉しいらしい。
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作者名：遠山すずか | 作成日時：2018年10月31日 10時
