現在編１−始まり― ページ9
16年後。
「・・・A。A！！」
名を呼ばれ、Aははっと我に返った。
「どうしたのだ。緊張しているのか」
「いえ・・・大丈夫です。グレイグ将軍」
慌てて気を取り直して傍らに立つグレイグを見上げて、Aは答えた。
ユグノア滅亡ののち、将軍への昇格を果たしたグレイグは、今はデルカダール王家の紋章である双頭の鷲が刻まれた、漆黒の鎧を身に纏っている。その姿に相応しく、これまでに何百回と魔物の討伐に赴くも、未だ無敗を誇っていた。
まあそれはもう1人の力もあるけれど。
「A、お前は己の力を認められた故、この場での同席を許されたのだ。堂々としていればよい」
言われたAは、玉座へ向かう絨毯を挟んで向かいに立つ人物の方へ向き直る。
「有難うございます。ホメロス将軍」
グレイグ同様将軍の位を持ち、グレイグとは対照的な白銀の、そして揃いの双頭の鷲の紋章が刻まれた鎧を纏ったホメロス。
古今東西の戦術に通じ、僅かな部隊で魔物の大群を打ち破るなど数々の実績を残している。
グレイグには及ばないものの群を抜いた剣術の腕も相まって、一般兵士からいきなり将軍へ昇格と言う快挙を成し遂げた。
部下からの信頼も厚く、軍師の役目も担うと言う多才ぶり。
正に「双頭の鷲」と称されるにふさわしいこの2人に、Aは弟子入りした。
悪魔の子を倒してマルティナの敵を討つ―――その一心でメイド見習いをやめ、戦士としての鍛錬に専念した。
グレイグには剣や馬術、ホメロスには呪文や戦術の師事を受け、瞬く間に実力を身に着けて行った。
一般兵士と言えど、数少ない女戦士だてらに今ではこの2人を除いては誰にも引けを取らないほどの剣術の腕と知略を持ち、それを証明するかのごとく先日デルカダールの国宝であるレッドオーブを盗んだ盗賊を捕まえたのである。
それから数日後の今日、デルカダール城はかつてない緊張感に包まれていた。
ユグノア城滅亡の元凶となった、今では「悪魔の子」と呼ばれる勇者が訪ねてきたと言うのである。
その事情を知るのは王を始め、グレイグとホメロスの両将軍、Aを含む城内の戦士など一部の人間に限られているものの、張り詰めた空気を訝る者もいた。
玉座に王を迎え、グレイグとホメロスがその両脇を固め、Aと数名の精鋭部隊が控え、緊張感が最高潮を迎えるその時を待つ。
一兵士の知らせと共に玉座に迎え入れ、その数分後、扉は再度ゆっくりと開かれた。
現在編２−悪魔の子の来城―→←過去編７−動き出す運命―（完結）
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 69人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
遠山すずか(プロフ) - りぃんさん» りぃん様、最後まで読んでいただきありがとうございました！またお気遣いのお言葉も、本当に嬉しく思います。短編の方も頑張って更新していきますので、またよろしくお願いいたします。 (2018年5月25日 16時) (
レス) id: 1a8ae502d9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃん(プロフ) - 完結おめでとうございます！お体を優先に気長に短編お待ちしております。本当に大好きな作品でした。 (2018年5月25日 16時) (レス) id: 7ca0ccb51c (このIDを非表示/違反報告)
遠山すずか(プロフ) - りぃんさん» りぃん様、コメントありがとうございます。ホメロスへの救い欲しさが募り、この連載の執筆に至りました。楽しみにして頂いているとの事、とても嬉しいです！頑張って更新していきたいと思います。これからもよろしくお願いします。 (2018年5月14日 10時) (レス) id: 1a8ae502d9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃん(プロフ) - 初コメ失礼します。この小説とても楽しみに読ませて頂いてます！更新頑張ってください！ (2018年5月14日 10時) (レス) id: 7ca0ccb51c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：遠山すずか | 作成日時：2018年4月26日 18時
