現在編22−衝撃の事実2― ページ30
「う・・・コホン、この様な事を話している場合ではなかったな。ホメロスにAよ、イレブンから話は聞いた。仲間全員で動いたら王に取り憑いている魔物―――ウルノーガに悟られかねん。じゃからとりあえずはこの人数で助けに来たのじゃ」
ロウの言葉に、一同の視線がイレブンに集まった。
イレブンはそれを受け止め、ロウに軽く頷いて口を開いた。
「ウルノーガを止めます。だから―――ホメロス将軍、Aさん、力を貸して下さい」
短く、きっぱりと言い切るその姿勢は、ロウより遥かに強い確信を持っているのを物語っていた。
王に一度あったきりのイレブンがなぜ、王が魔物に取り憑かれているのが分かったのだろう。
そんな疑問に答える様に、イレブンは続けた。
「こんな事を言っても信じられないかもしれませんが・・・僕は時を遡ってきたんです」
イレブンはかつて勇者の剣をウルノーガに奪われ、それにより大樹は枯れ、ロトゼタシアは崩壊してしまった。
旅した仲間を失いながらもどうにかウルノーガを倒し、その後の旅路で時を遡る方法を知った。
空高くそびえ立つ、人々の忘却の彼方に追いやられた塔で、遡れるのは自分ただ一人とイレブンは知らされる。
仲間は反対し、イレブンも迷った。だが彼は決意し、やがて仲間も了承した。
かつて失った仲間を救うため、ロトゼタシアの人々を救うため、時の渦に身を任せたのだった。
「廃墟と化したデルカダール城で、Aさん、貴方はホメロス将軍に囚われていました」
「私が?」
イレブンは頷く。
かつてイシの村だった「最後の砦」で、正気を取り戻したデルカダール王、グレイグと再会したイレブンは、城にはびこる魔物により世界が暗闇に閉じ込められてしまった事を知った。
その魔物を討つべく、イレブンはグレイグと共に城へ潜入する事に成功したのである。
隠し通路を通って辿り着いた玉座の間に、イレブンとグレイグは見た。
闇色の衣装に身を包み、心身共に魔に堕ちたかつて「冷徹なる軍師」と呼ばれていた将軍ホメロス、そして傍らに囚われていた誇り高き女戦士の姿を。
「その後ホメロス将軍は去り、暗闇の元凶の魔物は倒しました。でも・・・」
イレブンは瞳に真剣そのものの光を、哀しみで少し揺らがせながらAを見る。
「貴方は言っていました。どうしてこんな事になったのか、もう昔の様には戻れないのかと」
「・・・」
Aには、イレブンの話をただ聞くしかできなかった。
普段なら「そんな馬鹿な」と聞き流しているだろう。
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遠山すずか(プロフ) - りぃんさん» りぃん様、最後まで読んでいただきありがとうございました!またお気遣いのお言葉も、本当に嬉しく思います。短編の方も頑張って更新していきますので、またよろしくお願いいたします。 (2018年5月25日 16時) (レス) id: 1a8ae502d9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃん(プロフ) - 完結おめでとうございます!お体を優先に気長に短編お待ちしております。本当に大好きな作品でした。 (2018年5月25日 16時) (レス) id: 7ca0ccb51c (このIDを非表示/違反報告)
遠山すずか(プロフ) - りぃんさん» りぃん様、コメントありがとうございます。ホメロスへの救い欲しさが募り、この連載の執筆に至りました。楽しみにして頂いているとの事、とても嬉しいです!頑張って更新していきたいと思います。これからもよろしくお願いします。 (2018年5月14日 10時) (レス) id: 1a8ae502d9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃん(プロフ) - 初コメ失礼します。この小説とても楽しみに読ませて頂いてます!更新頑張ってください! (2018年5月14日 10時) (レス) id: 7ca0ccb51c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:遠山すずか | 作成日時:2018年4月26日 18時