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現在編11−軍師の私室にて― ページ19

一言発した事で本当に少し冷静さを取り戻せた。その調子で次の言葉を紡ぐ。
だがホメロスの表情の強張りが分かっても、その顔色に気付けるほどの冷静さはAにはなかった。

「ところでホメロス、貴方に聞きたいことがあ」

るのだけれど、と続けることはできなかった。

言い終わる前にホメロスがAに接近したかと思うと、手首に強い握力と共に痛みを感じる。
ホメロスに掴まれているせいだと分かった時には、もうそのまま歩き出していた。
グレイグの私室から直線状に伸びる通路を、鎧の金属音を潜める事なく響かせ、Aの腕を掴んだまま速足で歩いていく。

「ホメロス、痛いわっ、放して!」

Aは訴えるが、ホメロスは放すどころか歩調すら合わせようとせず無言のまま歩き続けた。

引きずるように連れてこられたのは通路の先にある部屋、ホメロスの私室だった。
扉を片手で押し開け、部屋に引っ張り込んだAをそのまま無造作にベッドへ放り投げる。
ベッドのスプリングが軋み、Aは勢いよく倒れこんだ。

すぐに起き上がり抗議する。

「何するのよ、ホメロス!」

掴まれた手首を見れば、赤黒いあざができている。感じた痛みに違わず強い力で掴まれた事を物語っていた。
小手を着けていれば良かったと心の中で溜息をつくAの耳に、冷たい低音が響いた。

「グレイグと何をしていた?」

その問いにグレイグに話したホメロスへの疑惑、そしてそれを本人に問うつもりだった事を思い出し、顔を上げる。

「その前に教えて。貴方ダーハルーネで……」

今度は遮られはしなかったが、ホメロスの射抜く様な視線と血の気が引いた様な顔色に思わず息を飲む。
いつもの冷静沈着はなりを潜め、Aの言葉など耳に入っていないみたいだ。
何かの呪いにかかった様にホメロスは呟く。

「お前もか、A。お前もグレイグを……っ」
「ホメロス、何を言って…」

ベッドから起き上がり、ホメロスに近づくと再度腕を掴まれる。
慌てて振りほどこうとするがびくともしない。
一般男性相手なら殆ど敵ではないが、知略だけではなく剣や格闘術の腕もグレイグを除いては城内随一のホメロスにはとても敵わない。

幼少の頃ホメロスに師事していたAは、その強さをよく知っている。

「痛い、放してっ」

先ほどとほぼ同じ事を叫ぶAの腕を掴む手を緩めぬまま、その頭上から勧告とも言える言葉を降らせた。

「話す気がないのなら―――――その身体に訊くまでだ」

現在編12−軍師の私室にて―→←現在編10−衝撃の事実―



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遠山すずか(プロフ) - りぃんさん» りぃん様、最後まで読んでいただきありがとうございました!またお気遣いのお言葉も、本当に嬉しく思います。短編の方も頑張って更新していきますので、またよろしくお願いいたします。 (2018年5月25日 16時) (レス) id: 1a8ae502d9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃん(プロフ) - 完結おめでとうございます!お体を優先に気長に短編お待ちしております。本当に大好きな作品でした。 (2018年5月25日 16時) (レス) id: 7ca0ccb51c (このIDを非表示/違反報告)
遠山すずか(プロフ) - りぃんさん» りぃん様、コメントありがとうございます。ホメロスへの救い欲しさが募り、この連載の執筆に至りました。楽しみにして頂いているとの事、とても嬉しいです!頑張って更新していきたいと思います。これからもよろしくお願いします。 (2018年5月14日 10時) (レス) id: 1a8ae502d9 (このIDを非表示/違反報告)
りぃん(プロフ) - 初コメ失礼します。この小説とても楽しみに読ませて頂いてます!更新頑張ってください! (2018年5月14日 10時) (レス) id: 7ca0ccb51c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:遠山すずか | 作成日時:2018年4月26日 18時

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