-prologue- ページ1
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ジリジリと照りつける夏の日差し。
流れる汗も拭わず、文句も溢さず、
ただ、目的地を目指して階段をのぼる。
耳を突くような蝉の声が、
明るく咲く向日葵が、
雲ひとつない青空が、
その全てが嫌味のよう。
その全てが、あの日を思い出させる。
「あ…、」
数多く並んだ同じ形の四角い石。
長い階段をのぼりきった瞬間に、
俺たちが目指している ”四角い石” がどれなのか、ひと目で分かった。
「この花…慎太郎だな。」
もう７度目のこの日。
それでもやっぱり慣れるものではない。
俺たちが持って来た花も加え、静かに手を合わせ目を閉じる。
色んな記憶が頭の中に駆け巡る。
楽しかった思い出や、思い出したくないあの日の事まで。
必ず仇を取るって決めたんだ。
焦る気持ちも、年を重ねるごとに増していく。
「ふぅ…」
気持ちを落ち着けるために小さくため息をついて、
ちらっと横目で隣を見る。
手を合わせ、目を閉じ、静かに涙を流す彼。
頬を伝う涙が、流れる汗と一緒にぽたっと落ちた。
「…、行こう、喉、乾いた。」
この日はいつも、彼の気が済むまでここに居ればいいと思い、
こちらからは声をかけない。
涙が止まらなくなって、過呼吸を起こした事もあった。
しかし成長したもんだな。
「あいよー、いつもの喫茶店いくかー。」
のぼって来た階段をスタスタと降りて行く彼の、
成長したはずのその背中が、あの日の彼の背中と重なった。
ーあの日。
雲ひとつない青空の下。
庭に咲いた向日葵が嫌味のように笑っていた。
普通こういう時って、雨だろ？
雷が鳴って、暗くて。
ドラマとかでよく見るじゃん。
俺の頭の中は変に冷静で、
そんなことを考えていた。
目の前で小さく震える背中が、ふと振り返る。
「っじゅ、りっ、…あぁ、っはぁ、はっ、」
俺の名前を呼び呼吸を乱す彼の手には、真っ赤に染まったナイフ。
彼の足元に倒れているのは、彼の父親。
そして俺の親友だった。
いやにうるさい蝉の声。
遠くからサイレンの音が聞こえた。
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作者名：こあら | 作成日時：2022年9月24日 22時
