あなたと彼の短編集 (ページ32)

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奥手な彼2 YS ページ32

｢え？部屋今散らかってるんだけど｣

｢いい！いいから、そのままで！なんなら手伝うし！｣

「いや、手伝わなくてもいいけど(笑)お茶でも飲んでいく？」

｢うん！いくいく！手伝わないけどいく！｣

あまりに時間がかかりすぎるから助け舟を出したら、かなり食い気味で乗ってきたオッパ。

｢ん、じゃあ、はい｣

｢…？なに？｣

｢エスコート、してね？私の部屋だけど｣

手のひらを上にして差し出すと、それだけでまた顔を赤らめてるだろうオッパ。

けど意味がわかった途端に車からすごい勢いで降りて、助手席側のドアを開けた。

車の外にいるオッパは、きちんと腰を折って、私に手のひらを差し出して、さっきまでの頼りなさはどこかへいったよう。

｢どうぞ、お嬢様、こちらへ｣

なんて執事みたいなこと言っちゃってるのに、それが板につきすぎてて今度は私が赤面する番。

エレベーターを待ってる間に繋ぎ直された恋人つなぎに、思わず中学生みたいに顔が熱くなる。

｢部屋にあげてくれるってことは…ね？｣

｢…え？…違う！違う違う！！！｣

｢今更なし、なんてなしだよ｣

エレベーターの奥へと追いやられて見上げた彼の顔には、もう、奥手なオッパはいなかった。