あなたと彼の短編集 (ページ24)

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膝枕 1 DH ページ24

(んーもうちょっと…あー！だめだ！)

はたと諦めて頭をヘッドレストに預けると、また指先で彼の髪を特に目的もなく触る。

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「ごめんね、もう眠さ限界。着いたら起こして…」

と言って、寝ることへの謝罪だけして、膝を借りることへは一言も言わず彼は私の太ももに頭を乗せるとすぐに夢の世界へと旅立った。

そこからはタクシーの運転手さんがハンドルを回す衣擦れの音と、微かに聞こえるラジオの音だけ。

膝枕。
普通は女子がしてもらいたい、憧れのシチュエーション。
または、ここぞと言う時に思い切り甘えられる、小悪魔テクとしても使える。

そんな素敵な技を、彼は、私にしている。

逆でしょ！

初めはそんなことを思って悶々と彼の寝顔を眺めていたけど、あまりに気持ちよさそうに眠るものだから、なんだか触れたくなった。

ふわっ

重力に従って変に立ち上がった髪の毛。撫でて戻してもまた元に戻ってしまう。

毛先をそっと触って、指でくるくる回して。

これくらいでは起きる様子は微塵もない。

ぴょん

押しては跳ね返る軟骨で遊んだり、ぷにっとした耳たぶをつまんでみたり。

あまりに動かないからちょっといたずら心がわいてきて引っ張ってみても、眉1つ動かない。

ぷにっ

そんなに肉付きのよくない頬に指を突き立てる。
あまりに動かなくてつまらないから、段々エスカレート。

つついて、軽くつまんで、ひっぱって、なんだか伸びちゃった気がして慌てて撫でて。

そんなことをしてると、今度は引っ張られて動く唇が気になって。

すーっ

触れるか触れないか、微妙な触り加減で、薄く開いた唇に触れる。

上唇を左から右へ、下唇へ移って右から左へ。

何回か往復してるうちに、無性にキスしたくなった。

(んーーー)

一生懸命体を丸めて顔を近づけるけど、向こうを向いて寝てる彼の頬にさえ、私の唇は届かない。

もう１回。

(んーもうちょっと…あー！だめだ！)

はたと諦めて頭をヘッドレストに預けると、また指先で彼の髪を特に目的もなく触る。

ゴソッ

ここに来てやっと彼が身じろぎをしたから起きたのかと思って見ると、向きを変えて顔が真上を向いただけで、まだ安らかな顔をして眠っていた。