不器用な看病 2 KH ページ3
「お粥できたよ、起きて」
「ん、んん」
いつの間にかうとうとしていた私は彼に起こされて、目の前に差し出された物体に目を見開いた。
「これ…」
「お粥。食べなきゃ薬飲めないだろ？ほら、食べろ。あーんしてやろうか？」
「え、いや、自分で食べるから」
そのお粥は食べ物というより、飲み物？いや、洗濯ノリ？
米粒の原型を全くとどめていないそれを、恐る恐る掬って口元へ運ぶ。
「どう？上手くできたんじゃね？」
「う、うん…実家ではいつもこんな感じのだった？」
「んーなんか違う気もするけど、味は変わんないって」
「うん…」
きっと、グルグルグルグルとかき混ぜ続けたんだろうな…
その姿を想像すると愛しさがこみ上げる。
「ほら、食べたら薬飲んで、また寝ろよ」
「あ、わかったって。自分でするから」
何かと世話を焼きたがる彼から逃げるように薬を飲んで布団へ潜りなおす。
「はい、おデコに貼って、っと。ほら、目閉じて、おやすみ」
「んー眠くないけど…おやすみ」
と言いつつやはり熱で体力を消耗していて、いつの間にかまた眠りに落ちていた。
ーーー
「ん、んーー。…あ、ちょっと楽になってるかも」
朝の日差しで目覚めると、随分と体が軽くなっていた、けど…
「ちょっと、起きて。またこんなとこで寝て、今度は自分が風邪引く…って、熱いし！」
「んー、んん、なんかダルい…」
「もーだから帰ってって言ったのに！バッチリうつってんじゃん！」
「うー、しんどいー」
「わ、ひゃっ！」
のそっと起き上がったと思ったら、ベッドの上の私に覆いかぶさってきて、そのまま押し倒される。
「ちょっ、重っ、退いて！今度はそっちが薬飲まなきゃ」
「いい、いらない。こうしてるのが一番治る薬」
とか言いながら私の体を回して後ろからキツく抱きしめ、首元に顔を埋めてスリスリと甘えてくる。
「ふっ、くすぐったいから、ちょっと！」
「んーハグしてたらほんとに治りそう…おやすみ」
「治るわけないし、ちゃんとご飯食べて水分とって薬飲んで……って、もう寝てるし」
昨日は彼なりに一生懸命看病してくれたんだし、今度は私がワガママ聞いてあげようかな。
今日だけ、ね。
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作者名：ゆちぇ | 作成日時：2014年7月13日 10時
