触れたい 1 KH ページ20
二人でご飯を食べて家の前まで送ってもらった。
もう家の前に着いてから5分は経つというのに、未だに降車のお許しが出ない。
そして降りようとした私の腕を掴んで引き止めた本人は、あれから今までずっと前を向いたまま。
「んー…」
この状況をどうしようか、考えすぎて声が思わず漏れたら、ビクッと動いた彼。
「あ、あのさ、その、俺さ…」
「うん？」
「…」
なんか言いにくいことがあるんだな。
普段は饒舌に何でも話して、口だけで私をいとも簡単に言い負かすのに、今日はやたら口ごもる。
「んー、どした？」
「あの、俺、Aが…」
「うん？」
さすがにここまで来たら私でもキュヒョナが何を言おうとしてるのかわかった。
だって、前を向いたままのその横顔が、暗がりでもわかる位に、真っ赤。
余りに赤くなってるその肌の温度を確かめたくなって、つい手を伸ばした。
「キュヒョナ」
「ん、わっ！！」
名前を呼ぶと同時に触れたら、思った以上に驚いて飛び上がったキュヒョナ。ほんとに、飛び上がった。
「いってぇ…」
「あははは！あ、あははは！飛んだ、あははは！」
「笑い事じゃ…もうA〜…何すんの」
甘さをはらんだこの張り詰めた空気がイヤだったわけじゃない。
ただ、本能的に彼に触れたいと思ったら体が勝手に動いていた。
「なんか、触りたくなった」
ハンドルにぶつけた太ももをさすっていた手を止めて、やっとキュヒョナがこっちを向いた。
「…」
そしてまた車内を沈黙が包む。
「俺も、触りたい。Aのこと、触りたい」
「ん、いいよ」
すんなり許可を貰えた驚きを見せつつも、躊躇いなく伸びてくる彼の手。
その行き着く先をまるで他人事の様に追いかけていくと。
「ん？」
「ここ。ご飯いっぱい詰め込んで膨らんだり、何も詰め込んでなくても膨らんでたり。触り心地よさそうで、ずっと触りたかった」
すっと伸ばした細く長い綺麗な人差し指が私の頬に刺さる。
「太ってるって言いたいの？」
「ちがっ！ぷにぷにで気になってた。でも、ほんとは他も全部触りたい」
あれ、さっきまで照れて照れて何も言えなかった人がなんかさらっと大胆発言したけど、本人気づいてるのかな？
「…変態」
「え、いや、そうじゃなくて！違うことないけど…えと…」
ああ、またまごまごキュヒョンさんになっちゃった。
仕方ないな、助け舟を出してあげよう。
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作者名：ゆちぇ | 作成日時：2014年7月13日 10時
