溶け残った深い藍【FGO】【クー・フーリン・オルタ】 (ページ39)

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#8-2…シアワセの流星ページ39

呪いは遂に自らの原型を露出させた。

彼女がもとより纏っていた白く滑らかなドレスは、
その白い肌を際立たせる様な漆黒に塗り変わっていた。

項垂れて表情の読めないAさんの口からは、絶えず

「逢いたい」「認めて」「愛して」「側に居て」「離れないで」「見捨てないで」

と、呪詛と化した望みとともに毒々しく変色した唾液が垂れ流されていく。

でも、

「大丈夫。これは作戦通りだよ。」

と、ミーシャさんの背に乗るDr.イマニから優しい声が届いて、俺達が狼狽えることはなかった。
闇の中でも良く通る声は、

【ここからは僕達に任せて。】

と、暗に示していて、俺の胸はどうしても締め付けられてしまう。
別れの覚悟はしたけれど、いざその時になると怖くて仕方がない。

いつも素敵な出会いはすぐに過ぎてしまう。止める方法は見つからない。
当事者がいつもそれを望むからだ。

だから。

「分かった。……ありがとう！Dr.イマニ！ミーシャ！」

寂しい。もっと一緒に居たい。話したかった。

でも、サヨナラは笑顔でするとずっと前に決めたから、
これで良いと涙を堪えて笑顔を作った。

「うん。こちらこそ、だ！
会えて良かったよ！そちらのマスター、藤丸立香‼」

『素敵な旅を送ると良い！君達には先があるのだから！』

2人の声が闇を裂く。
満ち足りた声が、久遠の闇に消えるその前に。

2人は先程の輝きとは比べ物にならない燐光をその身に迸らせて。
１つの流星と化して呪いに突撃した。

光に呑まれた呪いの塊は、みるみるうちにその体積を減らしていく。
自らの外殻が剥がれていくのが恐ろしいのか、
はたまた大切な人達が自分のせいで消えるのを憂いているのか、
Aさんの口を借りて流れてくる呪いの声は、気付けば

「待って」「やめて」「止まって」「いやだ」

と、必死に懇願するそれになって、
その声は少しずつ透明になって、

最期の声は、

「ありがとう、ごめんね。」

Aさん本人のそれになっていた。

彼等の作戦は、
自分達が溢れる呪いを全て肩代わりして、
そのまま消滅するという物だった。

Dr.イマニは何処とも知れない場所へ。
ミーシャは世界の裏側へ。

2人は大切な人の欠片と共に還り、悠久を眠ることを望んだ。