◇第6話 ページ8
今日の自主練で聞いた衝撃的な事実が頭から離れねぇ。
あの忍足が恋かぁ。
うちに帰る道を思案のまま大股で歩く。
でも、前方に大量の放置されたチャリと狼狽えている車椅子の誰か。
皆非情なことにそいつを一瞥するだけで細い道を歩いて行ってしまう。
これは助けねえと激ダサだな。と俺は別の道に行こうとしたそいつに近づいた。
「なあ。」
驚いた様子でこちらに振り向く。
横についてやっと気づいたが、同じ学校の奴だった。
ついでにテニスバックも持ってる。
車椅子ってだけでも目立つのに小さくても話題に出たことがないから、
今年からの一年かも知れねえな。
「これ全部どかしてやるからちょっと待ってろ。」
「え…良いんですか？」
「おう。」
狼狽るそいつの側に荷物を置いといてチャリをガシャガシャ退かしていく。
地味に重いし良いトレーニングになるな。
他のチャリのハンドルと重なってるのがうざかったが無事に道が出来た。
「終わったぜ。」
「あの、ありがとうございます！」
フワッと花のように笑うそいつ。
笑顔なのが1番いいな。
「良いってことよ。途中まで一緒に帰るか？
またこんな風に道塞がってたら不便だろ。」
なんとなく心配になって声をかけたが、申し訳ないとかで断られてしまった。
「いや、またこうなって助けてくれる奴がいなかったらどうすんだ。
ここで助けなかったら男として面目が立たねえよ。ほら、おまえんちどっちだ。」
「え、ちょっ…。」
自分のテニスバックを背負って車椅子の後ろでハンドルを握った。
少し強引かもしれないが車椅子ってことは抵抗が出来ない。
下心を持った輩がこいつの背後に回ったら一環の終わりだと思った。
…なんで俺、初対面の奴こんなに心配してんだろ。
「…大通りを真っ直ぐ行ったマンションです。お願いしてもいいですか？」
「分かった。任せろ。」
こいつの負担にならないようにゆっくり進んでいく。
そういえば名前聞いてなかったな。
「お前なんて名前なんだ？俺は宍戸亮。テニス部の三年だ。」
「私は八重薙Aです。今年から身体障がい者スポーツ枠で入学した1年です。
車椅子テニスやってます。」
「…！そうか、お前が。」
「？私のことご存知なんですか？」
「おう、忍足が話してた。良い子だったってよ。」
「そう、ですか。」
語尾が窄まったのでどうしたのかと下を向くと、
八重薙の赤い耳が見えた。はーん…両片思いってやつか？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アルっさん | 作成日時：2019年11月7日 12時
