足りない私。認める貴方。【テニプリ】【忍足侑士】 (ページ7)

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第5話ページ7

あの後、自分用のサーキットを終えて帰路に着きました。

椅子の車輪をゆっくり回しながら、今日のことを考えます。

初めて会った先輩。
部活初日でコーチにばっくれられて寂しかったのに、
先輩が来てからは全然そんなことなかった。寧ろすごく楽しかった。
とっても優しい人で、車椅子テニスをしてることをすごいと言ってくれた。
時々言われる、障がい者は大人しくしてろなんてことは言われなくて、凄いって言われた。
車椅子に乗った時に楽しそうだったのがなんだか可愛くて思えてしまって。
私の話を相槌を打ちながら真剣に聴いてくれて、嬉しくて。

もう少し一緒にいたいな、なんて思ってしまいました。

車輪を回す手が止まる。思考の回転も止まる。
一つのことが明確に頭に浮かんでしまったから。

私、あの先輩が好きになってしまったようです。

単純すぎるかも知れないけれど、それ程に嬉しいことだったんです。
だって、遠巻きに同情の目を向けられるか、嘲笑されるかだったのに、先輩は。
声をかけてくれたのです。
かたっぽだけしか残っていない足を、綺麗だと言ってくれたのです。
私が一方的に語っているだけだったのに、それを面白いって言ってくれたのです。

ずっと、1人だったのに、変えてくれたんです。

好きにならないはずがないじゃないですか。

でも。と、車輪を回し始めて考える。

私は、足りないものがあるから。
きっとこの気持ちを伝えたら迷惑になってしまうんだろうと思って。

この気持ちは、心の奥にしまっておこうと決めました。

ただ、一緒にいるだけで嬉しいのです。それで、いいのです。

そんな沈んだ気持ちを抱えた私に追い討ちをかけるように、
目の前の大通りには、たくさんの不法駐輪自転車が並んでいました。