足りない私。認める貴方。【テニプリ】【忍足侑士】 (ページ3)

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第1話ページ3

上手く壁打ちが繋がって連続最高新記録を出して上機嫌になっていたら
ボールが見当違いのところへ跳ね返っていってしまった。

ちょっと落ち込んでとりに行くと、誰かが拾ってくれたみたいで。
歌を聞かれたのは恥ずかしかったけれど、お礼を言おうと顔をあげると
まさかの男子テニス部の方だった。写真でしか見たことがなかったけれど、
確かにかっこいい。

違う、それよりも！

「あの、拾って下さりありがとうございます。」

「ええんやで。君、ここで何やっとるん？」

素敵な声。耳にするりと入ってきてびっくりした。

「ご覧の通り、壁打ちを。
今日来てくださる筈だったコーチの方が都合で来れなくなってしまって…。
コーチが連れてくるはずだった他の子も一緒に来れなくなったので、ぼっちです。」

自分で言っていて悲しくなってきた。

「さよか。なら、俺とちょっと話さへん？」

「え⁉お忙しいのでは？」

「ん？なんでそう思ったん？」

「新入生歓迎会の際に担当の先輩に男子テニスの方々のブロマイドと一緒に
この方々の名前と顔は絶対に覚えておきなさいと言われまして。
その、まだあやふやなのですが、えと…忍足様、で、合ってますか。」

あの時の先輩の形相はやばかった。ここで間違ったら殺されそうなくらいには。

「ああ、大正解や。それと今日は休みやから自主練の前に少しぶらついとったんや。」

「そうだったんですか。…私で良ければ少しだけ。」

「おおきにな。名前なんて言うん？」

そう言えば言ってなかった。

「八重薙Aと申します。今年から身体障がい者用スポーツ特別推薦枠で入学した1年です。」

「あぁ、今年から始まったやつか。今日部活初日やったのなら難儀やねぇ。
それと八重薙が乗っとんの、スポーツ用車椅子ってヤツか。初めて見てん。
俺乗ってみてもええ？」

「あはは…。車椅子は私用なので少しサイズは小さいですが、宜しければどうぞ。」

片足でよっこいしょと立ち上がって忍足様に車椅子を譲った。
忍足様は少し目を丸くして申し訳なさそうに謝ってくれた。

「慣れてるので大丈夫です。それに私、体幹はある方なので倒れませんよ？」

「すまへんな、おおきに。よっと…おぉ。」

視界が低いのが珍しいのか少し楽しそうな忍足様。

基本的な操作の仕方を教えてさしあげると、
直ぐにスピードを出して走れるようになって驚いてしまった。

いつもこれに乗ってテニスしてることをすごいといってくれたのがどこか嬉しかった。