46:3人目、4人目。 ページ47
彼はまた話した。
3人目は、女の吸血鬼に吸い殺された。
4人目は、ここへ訪れた見知らぬ吸血鬼に吸い殺された。
自分で命を絶ったのは、二人目の女だけ。そして、吸血鬼と恋仲になったのも、その一人。
Aは椅子から立ち上がり、もう一度彼の話したナイフを手に取った。そして刃の部分を撫ぜた。でこぼこしていて、赤黒い固まりがこびりついている。触った後の指は、粉が付着した。
Aはナイフを棚に戻し、彼の方へ振り向く。
「・・・ありがとうございます。お話。」
『・・・俺は、ここに留まっている奴らとは違って、貴方に憑りつこうとも、こちらの世界へ引き摺ろうともしない。ただ、ここへ来る人間の子に、生きていてほしんです。こんな・・・酷い世界の中ですけど。
・・・・・・貴方には、長くいて欲しい。それだけです。何かあれば、ここに来て下さい。』
「あっ・・・」
Aの前から彼は消えた。視えなくなった。彼女は辺りを見回し、少し俯いて廊下へ出た。今日もまた、クローリーの傍へ行く。
「・・・。」
本当は、こんなの嫌だ。が、やはり気になるのは、2番目にここへ招かれた彼女のこと。
それと、彼のこと。
人間と、その様な関係に見られるぐらい、仲を深めていたのだ。
―どんな女の子だったんだろう。
―どんな風に過ごしたんだろう。
―どんな気持ちだったんだろう。
彼は。クローリーさんは。
苦しそうに笑っていた彼は、どんな気持ちだったんだろう。
「お邪魔します・・・。」
ドアを控えめに開ければ、赤い髪が目に映えた。あぁ、と彼の存在に安堵を覚え、静かにドアを閉めた。
いつものように、小さなテーブルへ本が数冊置かれていて、その本が日毎に違うのは、彼がここに留まってもよいと言っているからか定かではないが、いつも通りのその中にAは進む。
「・・・今日は、用事、ないんですか?」
少しでも、彼の過去を知りたかった。軍服の彼から聞いたこと。Aは彼の返事を待つが、何も喋らないクローリーに、目を向ける。
「・・・クローリー、さん?」
彼はこく、こく、と頭で舟を漕いでいた。いつもは瓜を描く唇も、半開きになっていて、手元にはペンが転がっていた。
Aは静かに彼の近くへ寄る。こくり、こくり、と舟を漕ぐ度、
「ぁ・・・、ん・・・、ぁ・・・」
と小さく声が聞こえる。Aは小さく笑みを零し、前傾姿勢の彼の背を背凭れに付けようと、手を添える。
軽めに彼の肩を押す。
「あっ。」
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アカネ*(プロフ) - いやいや、めっちゃおもろいですー!読ませてもらってます!!( ̄▽ ̄) (2017年9月5日 6時) (レス) id: b55415a21a (このIDを非表示/違反報告)
剣、(プロフ) - 巡ってくれてるんですか!?あ、有難き・・・。こんな更新しないプー太郎ですみませんーーーー!!!!! (2017年9月4日 23時) (レス) id: 84eda379fa (このIDを非表示/違反報告)
アカネ*(プロフ) - んおおおおおお(( はい。やはり剣さんの作ったものは全部面白いです!頑張ってください! (2017年9月4日 20時) (レス) id: b55415a21a (このIDを非表示/違反報告)
空 - 確かにな!個人だったら頭逝ってる人とやりてぇなww (2017年2月16日 20時) (レス) id: 76247c4d35 (このIDを非表示/違反報告)
剣、(プロフ) - まぁ相手に寄るわな (2017年2月16日 17時) (レス) id: 359f1a87d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣、 | 作成日時:2016年3月20日 0時