44：皆、皆々・・・ ページ45
Aの問いかけに彼は黙り込んでしまう。
「ぁ、お話したくなければ、・・・構いません。」
彼は帽子を目深く被って、口を噤んだ。そして、小さな、震える声で、
『・・・・・皆、死んだんです。死んで・・・・・しまった。』
と言った。今にも泣きそうな声の彼に、Aは真剣な表情で、はい、と相槌を打った。
『俺が見て来た子達は・・・全員で、４人。その内の３人は、恐らく吸血鬼に。
もう一人は、・・・・・・自分で。全員、女の方でした。』
「・・・。」
『俺が見た最初の子は、』
Aは目を伏せ、彼の話に耳を傾けた。
――俺が見た最初の子は、ここに連れてこられたようでした。
酷く怯えていて、それでも吸血鬼の前では見栄を張っている様に笑っていました。その姿がとても痛々しくて、俺は彼女に見えない自分が悔しかった。
彼女に与えられた部屋で、暗い中、彼女は泣いていたんです。誰かの名前を小さな声で呼びながら。吸血鬼と話すのも怖かっただろうに。
・・・だって、部屋に入った途端に崩れ落ちて、体を震わせていました。
優しくなんかないですよ。俺のことが見えない彼女の支えになれれば、なんて思って、傍にいただけでしたから。声だって掛けてやれなかった・・・。
でも、そんな彼女の元に、助けが来たんです。俺の所属していた帝鬼軍の小部隊が攻めて来たんです。偶然、ここを見つけたんだと思います。
だから装備も体力も充分でなくて、・・・でも！でもその時、運が良い事に吸血鬼たちは出払っていました。
ですから、彼女を連れて逃げ出そうとした。俺は嬉しかったんです。彼女に、自由が与えられたんですから。
・・・もう少しで、市役所から出る事が出来る時だったんです。
――――・・・。
『一瞬、だった・・・。俺は今でもあの子の、助けを呼ぶ声や、隊員たちの絶望の顔を忘れられない。』
俺が生きていれば。俺が視えていれば。俺が、あの子の、と彼は呟く。Aは眉を寄せ、組んだ手に力を込める。
「・・・」
『・・・その子は、恐らく自由になれたんだと思います。別の、方法でしたけど。』
Aは少し俯いて、そうですね、とか細い声で返した。
『顔色が良くない。泣きそうな顔ですよ。・・・もう、やめますか。』
「ぃぇ。お話し下さい。私は、全て聞かないと、いけない気がするんです。」
『・・・分かりました。』
彼はまた、話を再開した。
――二人目の子は、前の子より、“長い方”でした。
「・・・はい。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 106人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アカネ*(プロフ) - いやいや、めっちゃおもろいですー！読ませてもらってます！！(￣▽￣) (2017年9月5日 6時) (
レス) id: b55415a21a (このIDを非表示/違反報告)
剣、(プロフ) - 巡ってくれてるんですか！？あ、有難き・・・。こんな更新しないプー太郎ですみませんーーーー！！！！！ (2017年9月4日 23時) (レス) id: 84eda379fa (このIDを非表示/違反報告)
アカネ*(プロフ) - んおおおおおお(( はい。やはり剣さんの作ったものは全部面白いです！頑張ってください！ (2017年9月4日 20時) (レス) id: b55415a21a (このIDを非表示/違反報告)
空 - 確かにな！個人だったら頭逝ってる人とやりてぇなｗｗ (2017年2月16日 20時) (レス) id: 76247c4d35 (このIDを非表示/違反報告)
剣、(プロフ) - まぁ相手に寄るわな (2017年2月16日 17時) (レス) id: 359f1a87d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：剣、 | 作成日時：2016年3月20日 0時
