35：貴方でない貴方が怖かった。 ページ36
まだ微かに震えているAに、クローリーは眉を寄せる。
いつの間にかソファへ寝かされていたAの顔を覗き込む。
「・・・視えた訳ではないね・・・？悪い夢でも見たのか・・・」
Aの額に浮かんだ汗を手の甲で拭ってやる。目の端に浮かんだ涙も掬った。
クローリーの呟きに、Aは、
「えぇ・・・悪い夢を、・・・怖い夢を見て、」
「呻いていた。」
「え、そこまで・・・？でも、とても怖かったんです・・・。貴方が、」
震える声で、俯く。
「僕が？」
「貴方が・・・」
そこまで言って、口を噤んだAに、
「悪い夢は口に出すともう見ないとか言わなかったっけ。・・・言ってごらん。」
「いや、貴方の姿を模した、怖いものに、殺されそうになって・・・、それで、クローリーさんが、私の名前を呼んで、それで、目が覚めて、それで・・・」
「・・・つまりは、僕でない僕が、君を殺そうとしていたって事？」
「そうなります・・・」
クローリーはそうか、と呟き、立ち上がる。そして、腰の剣を撫ぜAに微笑みかけた。
「ま、夢の僕じゃない僕は、君を殺そうとしていたみたいだけど・・・・・。現実の僕は君を殺さないよ。
何せ、フェリド君からの預かりものだからね。」
Aの頭を撫ぜ、笑う。
「そう、ですね・・・」
フェリド君からの預かりもの。今、自分と彼を隔てているのはその肩書だ。クローリー自身は畏まらないで、と言っているが、Aにとっては壁と言うか、枷と言うか、そんなものが心の内から拭えないでいる。
「少し落ち着いたみたいだから。良かった。」
「すみません・・・」
「いいよ。」
顔の前で軽く手を振り、窓の外をクローリーは見詰める。その横顔を見て、Aは息を吐いた。
ここだ。この空気。この、澄んでいて、淀んでいない、この空気。何も視えなくて、安心する。
「ふぅ・・・」
吸いこんで、吐く。テーブルを見ると、本が伏せてあった。丁度、読みかけのページ。
Aはそれを手に取り、ソファへ座り直す。目線をそこへ落とし、意識を本へ向けた。
ペラリ、と紙の擦れる音がする。しばらく続くだろうと思われたその音は、パタンと言う空気の押し出される音で終止符を打った。
「・・・読まないの？」
背後で彼の声がした。
「なんだか読む気なくしちゃって。」
「そう。そろそろお腹が空く頃だし、ご飯でも食べておいで。」
窓の外を見れば、もう暗くなっていて。
自分はかなり寝ていたのだろう、と改めて思った。
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アカネ*(プロフ) - いやいや、めっちゃおもろいですー！読ませてもらってます！！(￣▽￣) (2017年9月5日 6時) (
レス) id: b55415a21a (このIDを非表示/違反報告)
剣、(プロフ) - 巡ってくれてるんですか！？あ、有難き・・・。こんな更新しないプー太郎ですみませんーーーー！！！！！ (2017年9月4日 23時) (レス) id: 84eda379fa (このIDを非表示/違反報告)
アカネ*(プロフ) - んおおおおおお(( はい。やはり剣さんの作ったものは全部面白いです！頑張ってください！ (2017年9月4日 20時) (レス) id: b55415a21a (このIDを非表示/違反報告)
空 - 確かにな！個人だったら頭逝ってる人とやりてぇなｗｗ (2017年2月16日 20時) (レス) id: 76247c4d35 (このIDを非表示/違反報告)
剣、(プロフ) - まぁ相手に寄るわな (2017年2月16日 17時) (レス) id: 359f1a87d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：剣、 | 作成日時：2016年3月20日 0時
