34:早く、 ページ35
「はぁっ、はぁっ、っは・・・っは・・・」
ここは広い。
暗いのは嫌いだ。視たくないものを視てしまうから。
ここは広い。今自分が何処にいるかも分からないし、どんな状況かも分からない。だが、逃げなければ、と言うのだけは分かる。
廊下に並ぶ部屋の扉に駆け寄り、ドアノブをガチャガチャと揺らしても、開かない。
「Aー、」
「!!」
ザリザリと音が鳴る。Aはそこから走りだし、廊下を曲がる。開いている扉を見付けた。
早く、早くあの部屋に入って、鍵を閉めて、アイツから逃げないと。
身を返して部屋に入り、扉を閉めて、横にあった棚を扉の前へ引きずり出した。入った部屋の中も真っ暗で、空気が淀んでいる。
ザリザリ、
「!!」
息を殺す。心臓が爆発しそうだ。
ザリ、ザリ。
部屋の前で止まった、音。Aは目を見開き、部屋の奥へ逃げる。
「はハ、A。ここかナぁ、かくれんボ?」
ガツン、と扉に衝撃が走る。不味い。扉を、破壊しようとしている。中に入ろうとしているのだ。
「ぁ・・・!」
扉に亀裂が入った。振動して、扉の破片が床に散る。棚が扉の振動によって、横へ動き始めた。
ダメだったのだ、棚だけでは。
殺される。
殺される、助けて、そんな思いが渦巻いて、溢れて。目の端から涙が浮かんだ。
「クロー、リー・・・さ、ん・・・助け、て・・・フェリドさん・・・!」
ガタガタと震える身体を小さくして抱き締めても、扉の振動は収まらない。扉が割れた。
「・・・あ、あぁぁあっ!!!」
扉の向こうに見えたのは、狂気的な笑みを浮かべた、黒いもの。黒い巨体に、白い面が付いていて、口が裂けてるほどの笑みを湛えていた。見開いた赤い目玉は、Aと言う獲物を見る目で、ギラギラと光っている。
部屋へ入って来た。更に空気が汚れ、淀む。手に持っていた剣は、鋭く長い爪に変わっていた。
「ぁ・・・!」
赤い目がAを捉え、ギギギ、と変な笑い声を漏らす。そして、長い爪が振り下ろされそうになった時。
「A!」
頭に叫び声が響く。
「A!!A!!!」
Aは目を見開く。途端に心臓の鼓動が早くなっている所為か、呼吸を激しく繰り返しだした。
「ッ!!・・・ッハァ、ハァ、ハァ、」
クローリーは強く掴んでしまっていた彼女の肩を撫ぜ、瞳を見る。
「A、落ち着きなさい。・・・深呼吸、・・・そう、静かに。」
クローリーが言えば、Aの呼吸が次第に静かになった。
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アカネ*(プロフ) - いやいや、めっちゃおもろいですー!読ませてもらってます!!( ̄▽ ̄) (2017年9月5日 6時) (レス) id: b55415a21a (このIDを非表示/違反報告)
剣、(プロフ) - 巡ってくれてるんですか!?あ、有難き・・・。こんな更新しないプー太郎ですみませんーーーー!!!!! (2017年9月4日 23時) (レス) id: 84eda379fa (このIDを非表示/違反報告)
アカネ*(プロフ) - んおおおおおお(( はい。やはり剣さんの作ったものは全部面白いです!頑張ってください! (2017年9月4日 20時) (レス) id: b55415a21a (このIDを非表示/違反報告)
空 - 確かにな!個人だったら頭逝ってる人とやりてぇなww (2017年2月16日 20時) (レス) id: 76247c4d35 (このIDを非表示/違反報告)
剣、(プロフ) - まぁ相手に寄るわな (2017年2月16日 17時) (レス) id: 359f1a87d2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣、 | 作成日時:2016年3月20日 0時