検索窓
今日:16 hit、昨日:3 hit、合計:73,287 hit

34:早く、 ページ35

「はぁっ、はぁっ、っは・・・っは・・・」

ここは広い。
暗いのは嫌いだ。視たくないものを視てしまうから。
ここは広い。今自分が何処にいるかも分からないし、どんな状況かも分からない。だが、逃げなければ、と言うのだけは分かる。

廊下に並ぶ部屋の扉に駆け寄り、ドアノブをガチャガチャと揺らしても、開かない。
「Aー、」

「!!」

ザリザリと音が鳴る。Aはそこから走りだし、廊下を曲がる。開いている扉を見付けた。
早く、早くあの部屋に入って、鍵を閉めて、アイツから逃げないと。

身を返して部屋に入り、扉を閉めて、横にあった棚を扉の前へ引きずり出した。入った部屋の中も真っ暗で、空気が淀んでいる。

ザリザリ、

「!!」
息を殺す。心臓が爆発しそうだ。

ザリ、ザリ。
部屋の前で止まった、音。Aは目を見開き、部屋の奥へ逃げる。

「はハ、A。ここかナぁ、かくれんボ?」

ガツン、と扉に衝撃が走る。不味い。扉を、破壊しようとしている。中に入ろうとしているのだ。
「ぁ・・・!」
扉に亀裂が入った。振動して、扉の破片が床に散る。棚が扉の振動によって、横へ動き始めた。
ダメだったのだ、棚だけでは。

殺される。

殺される、助けて、そんな思いが渦巻いて、溢れて。目の端から涙が浮かんだ。
「クロー、リー・・・さ、ん・・・助け、て・・・フェリドさん・・・!」
ガタガタと震える身体を小さくして抱き締めても、扉の振動は収まらない。扉が割れた。

「・・・あ、あぁぁあっ!!!」

扉の向こうに見えたのは、狂気的な笑みを浮かべた、黒いもの。黒い巨体に、白い面が付いていて、口が裂けてるほどの笑みを湛えていた。見開いた赤い目玉は、Aと言う獲物を見る目で、ギラギラと光っている。

部屋へ入って来た。更に空気が汚れ、淀む。手に持っていた剣は、鋭く長い爪に変わっていた。
「ぁ・・・!」
赤い目がAを捉え、ギギギ、と変な笑い声を漏らす。そして、長い爪が振り下ろされそうになった時。




「A!」
頭に叫び声が響く。

「A!!A!!!」
Aは目を見開く。途端に心臓の鼓動が早くなっている所為か、呼吸を激しく繰り返しだした。

「ッ!!・・・ッハァ、ハァ、ハァ、」

クローリーは強く掴んでしまっていた彼女の肩を撫ぜ、瞳を見る。

「A、落ち着きなさい。・・・深呼吸、・・・そう、静かに。」

クローリーが言えば、Aの呼吸が次第に静かになった。

35:貴方でない貴方が怖かった。→←33:こわいこわい。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (82 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
106人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

アカネ*(プロフ) - いやいや、めっちゃおもろいですー!読ませてもらってます!!( ̄▽ ̄) (2017年9月5日 6時) (レス) id: b55415a21a (このIDを非表示/違反報告)
剣、(プロフ) - 巡ってくれてるんですか!?あ、有難き・・・。こんな更新しないプー太郎ですみませんーーーー!!!!! (2017年9月4日 23時) (レス) id: 84eda379fa (このIDを非表示/違反報告)
アカネ*(プロフ) - んおおおおおお(( はい。やはり剣さんの作ったものは全部面白いです!頑張ってください! (2017年9月4日 20時) (レス) id: b55415a21a (このIDを非表示/違反報告)
- 確かにな!個人だったら頭逝ってる人とやりてぇなww (2017年2月16日 20時) (レス) id: 76247c4d35 (このIDを非表示/違反報告)
剣、(プロフ) - まぁ相手に寄るわな (2017年2月16日 17時) (レス) id: 359f1a87d2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:剣、 | 作成日時:2016年3月20日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。