【GL】もしも彼女が悪役だったら。 (ページ8)

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6話ページ8

｢お金持ちなんだね｣

レジにて財布を開く磬を見て口にする。絶対、この量の札束は学生が持ってていいレベルじゃない。万札の束が目に映って出た言葉。

｢バイトで稼いでるだけ｣

何ともないように言うが、高校生が働けるバイトでそんなに稼げる物は聞いたことがない。高校生が毎日ここで寝過ごししていたらきっとすぐにお金が無くなるだろうに。……バイト、掛け持ちしてるのかな。

私は深く考えるのはやめて、鍵を手にした磬の後を着いて行く。今日までほとんど話したことがない人と一緒に泊まるなんて、お母さんなら絶対許してくれなかった。

｢楪っていうのはね、強くて綺麗な木なの。だから、西岡楪も何があってもへこたれない強い女の子になるんだから｣昔聞いたお母さんの言葉。
｢女の子は強ければ強いほど魅力的｣これは西岡家の1つの教え。この言葉は何故だか頭に残っている。

23号室の目の前に私達は立ち止まる。｢ここか｣と磬が口を開いた。磬は鍵を差し込み少し回すと、ドアを引いて開けた。
中はシンプルで、左の壁側にテーブル。その上にパソコン。床には黒くて分厚い少し固めのクッションが一面に引かれていて。廊下にはいくつもドリンクバーがあったし、確かに生活するには充分。

｢ネットカフェってこんな感じなんだ｣
｢意外と心地いいよ｣

私達は靴を脱ぐと、右の壁側に鞄を置く。ハンガーにブレザーを掛けると、我が家のようにクッションの上へ腰を下ろした。

｢磬と密室って少し緊張｣

目の前に腰掛けている磬を目に、そう声を発する。磬はスマホを片手で弄っていたが、その言葉に私の方へと視線を移した。

｢うわあ、意識されてる。こわー｣
｢違うから！｣

そう言って笑う磬。磬は少し大袈裟に差別的な目線を向けていて。……意外とお茶目さん。
そこで私は、はっと嫌な考えが頭によぎり口を開く。

｢明日、学校終わったら一緒に私の家に帰ろう｣
｢言ってる意味が分からないんですけど｣

話が噛み合わないのは置いといて。正式な了承を得ずに家に帰らなかった私に、お父さんならどんな反応をするか考えてしまった。お母さんが怒るのは目に見えて分かるが、今お母さんは家にいない。私に対していつも叱るお母さんが家にいないんだから、代わりにお父さんが怒るんじゃないかと。

｢実はこのこと、許可得てないんだよね。親に｣
｢うわあ。やってるよこの子｣

磬はそう言うと又もや、私に対して変人を見るかのような視線を向けた。