【GL】もしも彼女が悪役だったら。 (ページ7)

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5話ページ7

｢早苗さんだけには言われたくないな｣

私は運良く親に似ず｢完璧な変わり者｣にはならなかった。私にそんなことを言っている早苗さんの方がもっと変わり者。こんなに美人だったら、皆優しくしてくれるだろうに何故だか関わろうとしない。……いや、早苗さんが関わらない訳ではなくて、私達が関わろうとしないだけなのか。なんとなく、怖いイメージもあったし。

｢名字じゃなくて、磬、でいい｣

前言撤回。慣れないようにそう言う早苗さ……磬、は怖さなんかなくて私達と同じ普通の女の子。

｢磬の親はどうしたの？心配するかも｣
｢……私の親は悪い奴だから心配しないと思う｣

……やっぱりちょっと訳ありらしいけど。でも訳ありなのは磬の親で、磬自身はきっと訳ありなんかじゃない。きっと、美人で頭の良い磬に嫉妬した誰かが嘘の悪い噂を流した。多分そうだと思う。

磬は長く伸びた黒髪を上の方でポニーテールにしていて、身長も高い。いかにも美人ですって感じで。初めて見た時はそのオーラに圧倒された。

そんな磬はこの静かな空気に一喝するかのように口を開いた。

｢そういうそっちは？｣
｢そっちじゃなくて、ゆずね｣

さっきの仕返し。私がそう言うと又もや沈黙が続く。何なんだろうこの状況。

｢……ゆずはどうなの｣

今、あの磬からゆずって言われた……。呼び捨てで呼び合えていることに対し、とてつもなく嬉しい気持ちが湧き出るが、これ以上変わり者だと思われないようにこのことは私だけの秘密にする。

｢私の親は、離婚の話でうるさくって｣

私はそう言うと、何故だか急に家族との思い出がフラッシュバック。幸せだった頃を思い出し、目が潤むが必死に抑える。
そんな様子の私に見兼ねたのか、磬は机に置いていた筆箱とやらを鞄に綺麗に入れ込む。そこで磬は｢ねえ｣と。

｢いい場所あるよ｣

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｢私、お金持ってきてない｣
｢大丈夫。私が出すから｣

料金表には｢ペア2000円｣｢12時間パック1800円｣の文字。思っていたより安いんだなとか呑気なことを考える。
いい場所があると言われて連れてこられた場所はまさかのネットカフェ。確かに最近はネットカフェで生活するネットカフェ難民と呼ばれる人がいるっていうのは耳にしたことはある。

お父さんには｢友達の家に泊まる｣とちょっとした嘘を送ったが既読がついただけで返信は来ず。まあ、了承は貰ったってことにしておこう。