28話 ページ33
「咲良さん、泣き止んでくださいって」
いつまで経っても、座り込みながら泣きまくる私と目線を合わせるように同じくしゃがみ込む由梨。
そして彼女はそう声を発した。
私と目線を合わせると、彼女は何を思ったのか私を優しく抱き締める。その温もりは風の冷たさを忘れさせてくれた。
いつまで経っても泣き止まない私に、由梨は優しく言葉をかける。
「気にしないで下さいよ」
よしよし、と私の頭を優しく撫でてくる由梨に対して、私は涙で言葉にならない声を絞り出した。
「……っ、ば、ばかだよ……っ！」
「私なんか、こんな人間なのに……っ」
「なんで……ッ」
私は冷たい人間だ。もしかしたら由梨はここにいるかも、と少しは思っていたはずなのに。
私は自分のことだけでここに来ないで家に帰った。
彼女は悲しかったはずなのに。
前の彼にも言われたことがある。『君は可愛げのない女だ』と。そんな可愛げのない冷たい私に対して、なぜ由梨はこんなにも優しくしてくれるのだろうか。
「何でって。私、本気で咲良さんのことが好きですから」
彼女は、なぜこんなにも私を好きでいてくれるのか。私は泣きすぎて使い物にならない頭で必死にそんなことを考えていた。
本当は、少し私も彼女のことを気にしているんだとそう感じていた。しかしそれを認めてしまうのが怖くて、私は自分勝手に逃げてきていた。
そんな卑怯な私をいつまでも好きでいてくれた由梨。
私には、分からない。彼女は色んな人から好かれるはずなのに、なぜ私なのか。
「ホントに……、おかしいよ……っ」
こんなに純粋で綺麗な告白をしてくれたのは彼女が初めてだった。
私は泣きすぎて顔が赤くなっていて、それに加え心臓も壊れるほどバクバクと音を鳴らしていた。
……いや、もう逃げるだなんて卑怯なことはしない。
私が今、顔が赤くなっていて心臓もこんなに早く動いているのは、きっと私も……
「好きだよ……っ、ばかぁッ……！」
私も彼女のことが好きなんだ。やっと自分の心へ正直になれて何かが解放された気がした。
急な私からの言葉に由梨は「急に、なんですか…」と顔を赤くさせていた。初めて照れている彼女を見れて、私は少しだけ笑みをこぼしてしまう。
そんな私を見た彼女は「よかった」とほっとした様子を見せる。
そして近付いてくるその端正な顔。
私はそれに目をキュッと瞑ると、今までで1番優しく綺麗な口付けをしたのだった。
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ゆ - 尊い (2019年5月12日 17時) (
レス) id: 0c30cd4e30 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのキッコーマン(プロフ) - 途中までしか見ていませんが、とても僕はこの作風好きです!これからも更新頑張ってください! (2019年5月5日 18時) (レス) id: 6ae7a02465 (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく(プロフ) - ありがとう御座います！そんなこと、あるんですね笑 もしかしたらその小説の作者さんと気が合うかもしれません笑(？) (2018年12月31日 14時) (レス) id: b9c47787f2 (このIDを非表示/違反報告)
Fall ill apple(プロフ) - お気に入りさせてもらいました。余談ですが私の好きな小説の主人公(？)と同姓同名で少し驚きました…笑 (2018年12月31日 13時) (レス) id: c31f5fcd9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雪見だいふく | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mayu02071/
作成日時：2018年12月29日 16時
