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「もうすぐで徳川軍が此方へ向かって来ることは、貴女も知っているでしょう?」
徳川。奴等は圧倒的戦力を持っていて、天下もそれほど遠くない未来だと言われている。世の武士らは徳川との乱を避けていたいと願うことしか出来ない。
だが、我等の軍もそこそこの兵力を持っているので、天下を狙うものとして避けて通ることは出来ない。何せ、私は天下を狙う者の1人の女之介として戦場に立っているのだからーーー
徳川軍を倒せば私の天下は手に届く程近くなる。その為に、今回の戦には絶対に勝たなければならない。
「そこで、貴女が無事でいられるかどうかは分からないから……」
珍しく弱気な姫君の、細くて小さな手を己の手で包み込む。儚げな彼女の目を見つめ、私はハッキリと彼女に伝える。
「私は天下を取るまで、絶対に死にません」
天下を狙ってここまでやってきた。我等が徳川軍なぞに敗する訳が無い。その強気な感情に気付いたのか、姫君はいつものように愛らしく笑みを浮かべる。
「でも、無理はしないこと。貴女だって、まだ若くてあどけない女の子なんだから……」
「女の子」その言葉に、私は顔が熱くなる思いを覚える。
「女之介に、女の子とは……幾ら姫君でも仰ってはいけません……っ!」
と、私が必死になると姫君はふふっと口を抑えながら笑い始める。それに少しばかりか腹が立つが、姫君の美しさにその怒りが収まってくる。
きっと、生まれ変わったとしても綺麗なままでいるに違いない。姫様はきっと極楽浄土に行けるから。
「貴女様は、天下を取ってきっと平和な世にしてくれると信じているわ」
その言葉が脳裏に焼き付く。
ーーー私は将来天下を取る武士である。
そして、このようにずっと笑い合える平和な世の中を。小さな頃からのその希望は、今も変わってはいない。
きっと、私が姫様と結ばれる世を作りだす。だから私は、ここで徳川軍なぞに負ける訳にはいかないのだ。
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読み漁り文々(プロフ) - 好きです~!百合のふわふわした感じが伝わってきます、、 (2020年7月27日 19時) (レス) id: 38e11e6f87 (このIDを非表示/違反報告)
奏 - 雪見だいふくさん» お話、全部面白くて可愛くて好きです!更新頑張って下さい! (2020年5月5日 23時) (レス) id: 990e5cc797 (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく(プロフ) - 奏さん» コメントありがとうございます〜!是非お話にしてみますね〜! (2020年5月4日 18時) (レス) id: 26dbbe1ca5 (このIDを非表示/違反報告)
奏 - 性悪生徒の先生の嫉妬が見たいです。平気ですか? (2020年5月4日 11時) (レス) id: 990e5cc797 (このIDを非表示/違反報告)
そら - 雪見だいふくさん» あざます!!!!!!! (2020年5月1日 7時) (レス) id: 6770d884cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雪見だいふく | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mayu02071/
作成日時:2020年3月13日 8時