その気持ちは誰のため ページ10
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まるで安っぽいメロドラマだ。
目の前には、少し眉を下げて笑う母親と、誠実そうな男性。
そして無表情で私を見つめる、私が先日振られて失恋した同級生。
驚きなんて通り越した。疑問だって沈んでいった。そりゃもう、最初から無かったみたいに。
「そっか。新しい兄弟って言っても、キヨくんとはもとから友達だからちゃんとやっていけそうで良かった」
「ほんと？どうしてもその、Aには言いにくくて。だから押し切る形になって申し訳ないと思ってたの」
「ううん、母さんが幸せなら何でもいいよ。これから、お世話になります」
「Aちゃんが受け入れてくれて何よりだよ。こちらこそよろしくね」
にこやかに微笑む、私の新しいお父さん。雰囲気からしていい人なのは明らかで、母さんもこんな人に巡り合えて本当によかったなと安心した。
1対3の構図。いや、キヨくんは二人の後ろに立っているから1対2＋1といったところか。
これが、私の新しい家族。
失恋相手が家族になった。
まるで安っぽいメロドラマだ。
でもただの安っぽいメロドラマとちょっと違う理由は、既に養子縁組を組んでいて、連れ子同士の結婚も見事に認められないという救いようがないところにある。
明らかにバッドエンドに進む物語。そんなの誰が好き好んで聞きたいだろうか。
もちろん今更兄妹でどうにかなるつもりなんて、さらさらないけれど。
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大きい家がいい。にぎやかであたたかい家庭にしたい。
そう言って父さんは大きい一戸建ての家を建てた。
誤算だったのは、私に弟や妹ができる前に父さんが病気で亡くなってしまったことだけ。
だから新しいお父さんとキヨくんが、部屋を持て余す私たちの家に引っ越してくるのは当たり前のことだった。
自分の部屋のベッドにごろんと寝転ぶ。
何も変わらない景色。私の部屋は何にも変わっていないのに、変わらないはずの家には、知らないものばかりがどんどん増えていく。
再婚したいと母さんが思っていたことは知っていたし、私はそこになんの不満もない。女手一つで私を育ててくれた母さんには、私ももうすぐ独り立ちするし幸せになってほしいと思っていた。
だけど、だ。
いったいなんで相手がキヨくんのとこだというのか。
最も、告白したのが最近だとは言っても未練なんてものはないんだけども。
あれからも友達として仲良くやってたわけだし。
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作者名：さつき | 作成日時：2020年8月12日 3時
