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そのままにしていると「ごめん、電話」と聞こえたので手を挙げて反応だけしておいた。
勿論Aの行動にも問題はある。
ただ、元凶は俺がはっきりしてなかったことだ。
考えることも避けてたけど、今日話してそれを痛感してしまった。
どっちつかずで何年もずるずるしたまんま。何やってんだろ俺。
傷心状態の俺を放っておいて楽し気な声で話すレトさんにも若干腹が立つ。
ここまできて酒も入ってるんだから、八つ当たりくらいさせてくれ。これも後から後悔するんだろうな。
そう思って顔だけ上げた瞬間、レトさんは今日一の笑顔で俺の耳にスマホを押し付けた。
は？という顔で見つめれば「キヨくんとも話したいって！」と言うからそもそも誰だよ、と低い声で呟く。
ダルそうに『もしもし』だけ言ったら軽く叩かれて睨まれた。
何すんだとこれまた機嫌悪く呟いた直後、多分俺の周りの時空は止まったかなんかしたはずだ。
「…あの、A、です」
『……はっ？』
勢いよく上体を起こしてスマホを見ると俺のスマホで、画面にはAの文字があった。
レトさんは自分のスマホでニヤニヤする顔を隠しながら、電話かけちゃった、と一言。
…は！？何してんの！？
「久し、ぶり」
『…おう』
「レトルトくんって、キヨが仲良かった人かな？今、えーと、遊んでるの？」
『あー、まあ、久々に会ったし飲むかってなって』
「そっか、急に電話かかってきたから、びっくりして…せっかく二人で話してたのに大丈夫？」
『いや、それはまあ…ていうかそっちこそ今大丈夫だった？』
「あ、うん、全然！レポート書いてたけど、期限まだだし」
『そ、か』
気まずいというか何というか。
Aも夜にいきなり、時々しか話していなかった俺、の表示で知らねえ奴から電話かかってきたからか、かなり動揺しているらしい。
そりゃそうだ。何してくれてんだマジで。
むず痒い会話をしつつ目の前のレトさんを睨みつけると、必死に笑いを堪えていた。
いや堪えきれてねえし。声出てるし。涙まで拭くな。
悪いけどちょっと待ってて、と言いながら居酒屋の外に出る。
口調が、口調があり得ないキヨくんじゃない、悪いけど…ちょっと待ってて？とか！
と、俺の真似をするときだけあからさまにキリッとさせながらひーひー言ってる酔っ払いに強めの肩パンを食らわせた。
あんな奴を目の前にして電話するのなんて御免だ。ましてAとなら猶更。
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作者名：さつき | 作成日時：2020年8月12日 3時
