私の宝物入れ【ky】【短・中編集】 (ページ2)

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ちら、と隣を見るとスマホと愛を育むうちの彼の姿がある。

最近はお互い忙しく、正直ご無沙汰だ。その上私の話も頭に入っていないなんて、あんまりでは？もちろんその友人ほどの待遇を期待していたわけじゃないけども。

こんなことを考える私がふしだらなの？

そもそもめんどいって。何だそれ。これも私が悪かった？正直に自分の気持ち言わなかったことも、今日一日しつこく話しかけたことも？
でも仮にも彼女に対して。いや仮にもってそれこそ何。れっきとした彼女ですが。

急に私が話さなくなってやっとキヨはこっちを向いた。それと同時に寝返りを打つ。

今はキヨの顔を見たくなかった。

『A？』

背を向けているから、キヨがどういう顔をしているかはわからない。でもきっと、今にもため息をつかんばかりの呆れ顔をしているに違いなかった。

想像するだけで胸が痛い。それでも振り向いてやらない。さっきのめんどい発言は、私の心にぽっかりと穴をあけたようで。

はあ、と小さくため息が聞こえた。やっぱり。
ただ、想像するのと実際に体験するのではダメージが全然違う。

胸が苦しくて、一瞬呼吸を忘れた。

『明日、どこであんの？』

「…」

『何時まで？…A？』

何も答えず黙っていると、キヨは私を抱き寄せた。鼻先で器用に髪をよけ、そのままうなじに顔をうずめる。

これがキヨからの“合図”だった。
いつもは求めてくれることが嬉しくて満面の笑みで振り向くけど、今日ばかりはそうはいかない。

お腹に回っている綺麗な手を雑に引っぺがす。後ろから、はっ？という声がした。キヨからの誘いを拒んだのは、今までで初めてのことだった。
私が拒まれることはあったけど。

「やめて。そういう気分じゃないから」

『…あそ』

キヨに向かってこんな冷たい声を出したのも、初めてのことなんじゃないかと思う。
いつも笑顔で好きって言って、べったりくっついて。そんな馬鹿な女に見えてたかもしれないけど、お生憎様。

キヨは大きく舌打ちをして、寝室から出ていった。

もはや悲しいを通り越して呆れ返っていたからか、全く涙は出なかった。
そうやって優しい声出して誘えば、ご機嫌になるとでも思った？所詮その程度の女だと思ってたわけ？
ていうか私の方から催促しないと、今この時まで明日の私に興味がなかったわけだよね？

ほんと、馬鹿みたい。

ベッドが広くなったのをいいことに、大の字で寝てやった。

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